物流業界の2024年問題はマクロ経済にどのような影響を与えるのだろうか(写真:ロイター/アフロ)
  • 人手不足に陥っている日本経済だが、労働力人口の減少だけでなく、平均労働時間の落ち込みも影響している。
  • 平均労働時間が減少している要因として挙げられるのは、パートタイム労働者の増加や「働き方改革」、特に有給休暇取得の義務化だ。
  • 起業の設備投資が活発化し、生産性上昇率が上がらなければ、人手不足が続き、賃金に上昇圧力がかかり続ける。

(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)

<労働力人口、労働時間ともに伸び悩み>
 日本経済は人手不足に陥っている。市場メカニズムで考えれば、賃金上昇が生じることで労働供給、すなわち就労および労働時間の増加が促され、人手不足が解消へ向かうはずだ。

 だが、近年は賃金上昇が生じているにもかかわらず、労働供給が伸び悩んでいる。

 就労については、人口要因が制約になっている。

 働き手の規模を示す労働力人口は、2012年を底として増加傾向を辿ったが、2019年以降、7000万人を目前にして伸び悩んでいる。コロナ禍後、主婦層や高齢層において働き口を探す動きが鈍る中、過去からの少子化の影響波及により15歳以上人口が減少局面に入ったためだ。

 そして、1人当たりの平均労働時間は、コロナ禍前後の2018年から2020年にかけて急速に落ち込んだ後、伸び悩んでいる。市場メカニズム外の要因、具体的には働き方改革など制度的要因が一因であろう。

労働力人口の推移
1人当たりの平均労働時間

<市場メカニズムがうまく機能せず>
 先行きも、賃金上昇が続いても、労働供給の増加を期待しづらい。人口要因や制度的要因の影響により、労働供給において市場メカニズムがうまく働かないためだ。

 仮に、人手不足で設備投資が活発化し、生産性上昇率が高まれば、企業の労働需要の伸びが抑制され、労働需給がバランスし得る。だが、そのような経路がうまく機能せず、人手不足状態のままとなれば、賃金に上昇圧力がかかり続けるだろう。

 日本銀行の物価安定目標が達成されるとの期待が高まっているが、その根底には構造的な賃金上昇圧力があるとみられる。