- 岸田首相が派閥解散を宣言したことで、長期政権を目指して衆院解散に踏み切る可能性が出てきた。
- メインシナリオは9月の自民党総裁選までの政権継続だが、秋の総裁選で続投が難しいと判断すれば、一か八かの衆院解散もあり得る情勢だ。
- 仮に首相が衆院解散に踏み切るとすれば、所得税・住民税の減税が実施される6月か。あわせて、消費税減税も視野に入る。
(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)
昨年12月16日に寄稿した拙稿「絞られる次期首相の条件、「ポスト岸田」の一番手は初の女性首相か」では、秋の自民党総裁公選で想定される首相候補を提示したほか、秋まで総辞職も衆院解散もなく、岸田政権が継続しやすいとのシナリオを提示した。
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「ポスト岸田」候補については、女性を含めて派閥色が薄い候補が有力との見方に変わりない。だが、宏池会解散など、このところ岸田首相がみせている大胆な決断を踏まえると、首相が長期政権を目指して衆院解散に踏み切るリスクシナリオを考える必要が出てきた。
経済政策にも影響があろう。岸田首相は続投を目指して大胆な政策に踏み切る可能性がある。消費税減税を検討する可能性も念頭に置いた方がよいだろう。
【歴史的な自民党の派閥解散・党改革】
<主要派閥解散>
政治資金問題を機に、自民党は歴史的な変化を迎えている。昨年末の時点では安倍派(清和政策研究会)の影響力低下がメインテーマであったが、今年に入り、派閥自体の在り方が大きく変わろうとしている。
まずは派閥解散だ。1月18日、岸田首相は自らが率いてきた岸田派(宏池会)の解散を宣言した。翌19日に派閥の元会計責任者が政治資金規正法違反で略式起訴されるのに先立って決断した格好だ。
安倍派および二階派(志帥会)の会計責任者らも19日に立件され、同日に両派とも解散を決定した。なお、安倍派については、取り沙汰されていた幹部の立件こそ免れたものの、大野参院議員、谷川衆院議員らが立件された。
今般、政治資金規正法違反を問われていない3派閥のうち、麻生派(志公会)、茂木派(平成研究会)は存続するものの、森山派(近未来政治研究会)は25日に解散を決定した。
6派閥のうち2派閥のみ存続となれば、自民党の国会議員に占める派閥所属の議員は3割弱にとどまることになる。
次に、政治刷新本部で議論されている党改革も、派閥の在り方を大きく変えるだろう。