自民党細田派(現安倍派)の政治資金パーティーで気勢を上げる安倍晋三元首相(中央)ら=2020年9月、東京都内のホテル(写真:共同通信社)

自民党5派閥の裏金問題が国政の重大テーマになっています。政治資金パーティーのパーティー券収入を政治資金収支報告書に記載しなかったとして、東京地検特捜部が政治資金規正法違反の容疑で捜査を進めているからです。報道によると、過去5年の裏金総額は、最大派閥の安倍派だけで6億円以上。昭和から延々と続く「政治とカネ」の問題に、政治はいつ決着をつけることができるのでしょうか。「政治資金規正法」を中心に政治とカネの問題をやさしく解説します。

(鈴木 裕太:ジャーナリスト、フロントラインプレス

「政治とカネ」の不健全な歴史

「政治とカネ」の問題は今に始まったことではありません。政治活動を支える資金(政治資金)に関する「政治資金規正法」は、どのようにして生まれたのでしょうか。

 民主主義社会では自由な政治活動が保障されなければなりませんが、政治資金の金額や出所が野放図になると、政治家の腐敗が進み、政治が乱れる恐れがあります。そのため、第2次世界大戦が終わって間もない1948年、米国の法令を参考にした政治資金規正法が議員立法で成立しました。政治資金の流れを国民に公開して絶え間ない監視と批判を仰ぐことで、政治活動の公正を確保しようとしたのです。法律名を「規制」ではなく「規正」としたのも、民主主義の健全な発展を主目的としたからです。

かつての新聞を開くと、「金権政治」「金権選挙」のすさまじさが伝わってくる。1970〜90年代の読売新聞からフロントラインプレスが作成
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 しかし、理念とは裏腹に昭和の時代は「金権選挙」「金権政治」にまみれました。日本では長く自民党政権が続いてきましたが、その歴史は「政治とカネの歴史だった」と言っても過言ではありません。

 例えば、1970年前後の参議院議員選挙・全国区では、しばしば「5当・4落」と言われました。集金能力が5億円なら当選、4億円なら落選。そんな実態を物語る言葉です。国政選挙だけではありません。1987年の自民党総裁選では、カネの力で多数派を形成しようとした派閥が態度を鮮明にしない議員に3000万円の実弾(現金)を渡し、総裁選全体では25億円が飛び交うとも言われました(読売新聞1987年7月14日朝刊など)。

ロッキード事件で逮捕された田中角栄元首相(写真:代表撮影/AP/アフロ)

 政治とカネ絡みの贈収賄事件・脱税事件も噴出します。田中角栄元首相が逮捕されたロッキード事件、竹下登政権を崩壊させたリクルート事件などは、多くの方が記憶しているのではないでしょうか。

 しかし、1990年代に入ると、政治とカネの不健全な関係に国民の怒りが爆発しました。1994年の総選挙では、自民党が敗北して戦後初の本格的な非自民政権が誕生。政権の座に就いた細川護熙首相の下で、本格的な政治改革が実行されていきます。お金がかかると言われた中選挙区制を廃止して小選挙区・比例代表並立制を導入。企業と政治の癒着を断つため、政治資金規正法を改正するなどして企業献金を原則廃止し、代わりに政党助成金を導入することも決定したのです。

 このときの一連の政治改革が、大枠では現在も続いています。

 では、そもそも「政治資金」とは何でしょうか。次のページで図も使って説明していきます。