岸田首相が安倍派を切ったのは失敗だったと野田氏は指摘する(写真:つのだよしお/アフロ)

 政治資金パーティーを巡る問題が連日報道されている。松野官房長官、世耕参議院幹事長、高木国会対策委員長、西村経済産業大臣、萩生田政務調査会長など、安倍派9人が辞任に至り、支持率が低かった岸田政権にはとどめの一撃といった感がある。

 岸田首相はどこまで持つのか。これを機に、自民党の派閥政治は解体されるのか。政治資金改正法の抜け穴はどこまで解消されていくのか。1994年に政治改革関連法の審議に1年生議員として参加し、政治とカネの問題と戦うことが政治家としての出発点だったと語る、衆議院議員で元首相の野田佳彦氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──1月20日に通常国会が始まるため、その前に特捜部は関係する議員を起訴する可能性があります。立憲民主党を中心に野党が衆議院の解散と岸田政権の退陣を求めていくことも予想されます。また、「衆議院解散選挙をすれば岸田おろしが始まるので、岸田さんは解散総選挙は望まない」という見方がある一方、自民党の石破茂さんは「来年度予算案が通ったら辞めますというのはありだ」とテレビ番組で述べました。通常国会が始まったら、どうなっていくと思われますか。

野田佳彦氏(以下、野田):1月20日に国会が始まるかどうかはまだ分かりません。特捜部の捜査の影響で、1週間ほど開会が遅れる可能性があります。足もとには様々な重要な政治課題がありますが、まずは政治を正さなければ日本は良くなりません。ですから、政治改革がテーマの国会になっていくと思います。

 自民党が自浄作用を見せて、深い反省のもとに何らかの提案をしてくるかどうかが一つのポイントですが、それは難しいのではないかと考えています。

 岸田さんにはトップとしての危機感が足りません。30年前のリクルート事件の時は、石破茂さんや岡田克也さん(当時 自民党)といった若手が怒り、改革の提言を出しましたが、そういった若手の提言は今の自民党の中から何も聞こえてきません。

 こう考えると、自民党から提案を装ったものは出てくるかもしれませんが、抜本的な提案が出てくる可能性は低いと思います。我々野党こそが必要な法案を国会に提出しなければなりません。この点で、野党各党は共闘していける可能性は十分にあると思います。

 多弱の野党がしっかりスクラムを組んで、自民党を追い詰めて法案をのませていく。もしその法案をのまないというのであれば、「岸田政権よ、国民に真意を問え」と、我々はさらに強く迫っていく考えです。この流れが、今年の前半の動きになるのではないでしょうか。

 細田博之・衆議院議員が亡くなりましたが、現時点では、4月の補欠選挙は細田さんの地元でのみ行われる予定です。仮にもし今回の件で逮捕される議員が出てくれば(どれだけ逮捕者が出るかもにもよりますが)、解散の可否なども検討されていくと思います。

──30年前のリクルート事件の時に、自民党の若手が集まって「政治改革大綱」を作りました。しかし、今回はそのような動きを見せる若手議員が自民党にいない。なぜだと思われますか?

野田:政治家が劣化したのだと思います。あるいは、派閥単位で裏金作りをしているので、派閥に染まり「これはおかしい」と言える元気のある人がいないのかもしれません。極めて残念なことだと思います。

──政治資金パーティーを巡る問題で、安倍派や二階派は特に大きなダメージを受けたと思います。次の選挙では、こういった派閥に所属していることが大きなマイナスイメージになります。今後、自民党の派閥政治はどうなっていくと思われますか?