故ジャニー喜多川氏による性加害が大きな社会問題になったジャニーズ事務所(写真:共同通信社)

 昨年3月、英BBCが長らく日本のメディア・エンタメ界ではタブーとされてきた、ジャニー喜多川による性加害問題を取り上げ、大きな注目を集めた。翌月には、元ジャニーズ・ジュニアのカウアン・オカモト氏が、外国特派員協会で会見を開き、自身が受けた性加害について赤裸々に語った。相次ぐ被害者たちの証言、ファンの署名活動、国連人権理事会の調査もあり、事務所側は30年以上も告発が続いてきた性加害の事実をついに認めた。

 事務所は社名を変更して、被害者へ謝罪すると共に補償を始めた。数多くのタレントが事務所を離れた。そんな中「ジャニーズ性加害問題当事者の会」にも所属する被害者たちが新たな活動を開始した。「1 is 2 many 子どもへの性暴力を根絶する Action Plan」を発足させた中村一也氏と二本樹顕理氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──中村一也さんと二本樹顕理さんは「1 is 2 many 子どもへの性暴力を根絶する Action Plan」(通称:ワニズアクション)という団体を立ち上げました。どのような活動なのか教えてください。

中村一也氏(以下、中村):ワニズアクションのホームページに「あなたが生きるこの社会、この世界を、未来の子どもたちに託したいと思えますか?」という一文を記しましたが、「改めて事の重大さを考える」「二度とこういうことを起こさせない」「自分たちのような被害者を生まない」といった考えを実現するために、この活動を始めました。

ワニズアクションのロゴマーク / ワニズアクションのホームページより

 具体的な活動の内容は「児童の性被害における刑事・民事の時効期間の撤廃」を政府に求める運動や、被害者の心のケアなどです。

 団体のロゴマークであるワニのキャラクターには「性暴力を食べつくしてなくしてしまおう」という意味があります。ジャニーズの性加害の記憶を風化させることなく「性加害・性被害の問題意識を次の世代にも語り継ぎたい」という意志を込めています。

「ジャニーズ性加害問題当事者の会」という団体もあり、私はそちらにも参加しています。ただ、当事者の会がおカネ(賠償)ばかりを目的にしているかのような印象を持たれるようになってしまった。自分としては「そこではないよな」という意識と、先に挙げたような活動をやっていきたいという思いがあり、二本樹さんに声をかけました。

二本樹顕理氏(以下、二本樹):「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の活動は、「性加害問題を事実認定する」「謝罪する」「被害者に対する補償と救済行為を行う」といったことを目的にしています。そういう意味では、ある程度、活動は一段落ついたと考えています。

 でも、補償を受けたから、当事者としての活動はもうこれでお終いなのかというと、そうではない。こうした性加害がこの国で二度と起きないようにしたいという思いもあるし、補償の先にあるのは何かと考えると、こういう活動ではないかと考えました。

──専門家の協力を得て、さまざまなプログラムを実施すると書かれています。どのような方々がワニズアクションの活動に関わってくるのでしょうか?

二本樹:「人権問題や時効撤廃の活動であれば法律関係の専門家」「性被害のケアであれば臨床心理士」「小児性愛などの問題を抱える加害者側への支援であれば精神保健福祉士」、こういった方々に協力を仰いでいきたいと考えています。

──「12月5日、立憲民主党の会派法務部会に出席し、要望書を提出するとともに、刑事・民事の時効制度について意見交換してきた」と発表されています。

中村:私たちが問題としているのは、子どもへの性犯罪における、刑事の時効期間と、民事の損害賠償請求権の消滅時効です。