正月の日本を襲った能登半島地震(写真:AP/アフロ)

(山本一郎:財団法人情報法制研究所 事務局次長・上席研究員)

 2024年の幕開け早々、能登半島北端の輪島市、珠洲市周辺を襲った巨大地震。山がちな半島特有の地形や寸断された隘路に悩まされていましたが、ホバークラフトが投入されるなどして、ようやく被災地に暮らしていけるだけの物資が輸送できるようになってきました。

 大型の余震や豪雪などの悪天候もあり得る中で、ギリギリの人命救助や輸送作戦も行われています。石川県の皆さんだけでなく、応援に入られた各都道府県消防・防災ご担当者や防衛省・自衛隊、海上保安庁および電力会社や通信会社、医療関係者ほか各民間の皆さんのご努力には本当に感謝に堪えません。

 総理の岸田文雄さんも、巨大地震発生の報が入るや発生1分後には対策室を設置。5分後には関係部門への指示出しを行うなど、きちんと初動の対策に力点を置き、状況把握や人命救助、物資輸送に尽力されました。

 石川県知事の馳浩さんや副知事・西垣淳子さん以下、地元も不眠不休に近い激務にて対応を進めています。その結果、良い意味で、国と県・自治体および各省庁・民間の連携が取れたのではないかと思います。

 余震も予想される中、気を緩めることなくご安全に対処を続けていただければと願っております。

 災害関連死を含め、住民278人が犠牲になった2016年熊本地震では1万を超える自衛隊員が展開していました。それを踏まえ、一部のマスコミは自衛隊投入の規模や時期に関して岸田政権を批判する言動が見られます。

 ただ、熊本にはもともと自衛隊基地や駐屯地がある土地柄です。また前述の通り、山がちな能登半島の場合、道路が寸断され、海面が隆起して港湾が使えなければ、陸路も海路もそう簡単には使えず、部隊を大規模に展開する平地も少ないという事情から、同時に大人数を投入することが困難であった事情は斟酌されるべきではないかと思います。

 また、岸田政権に対する批判として、閣議決定で暫定的に出せる金額に過ぎない40億円前後の災害対策費が過少であるとの指摘もありました。ただ、これは国会審議を経る前に、政権の一存で出せる金額がまずは40億円であるというだけです。

 2023年度(令和5年度)の予備費は4580億円ほど残っており、今月開催される通常国会で補正予算が順当に組まれれば、2月上旬には予備費を使い切るまでに充分な予算が投下できるようになるでしょう。現状では、岸田文雄さんは1兆円を超える復興予算を組むとされており、なかなか強烈なものがございます。

 議論の仔細は大濱崎卓真さんが別で記事を書かれておりますので、そちらをご参照ください。

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 岸田政権によるここまでの激甚災害の対応を振り返ると、各省庁、石川県と関係事業者、医療関係者の活動を潤滑に進められるようセンター役に徹して、とてもうまく初動の災害対応は乗り切ることができたのではないかと思います。

 他方で、石川県知事の馳浩さんが副知事の西垣さんと調整したうえで、奥能登の病院を一つにまとめる大胆な医療改革を元旦の新聞でぶち上げた夕方に、地震が起きたのはすごいタイミングでした。

 ここでもし現地医療を支える珠洲総合病院や輪島総合病院、宇出津総合病院、穴水総合病院がなかったら、と思うと肝が冷える気がいたします。

 もっとも、金沢大学など地元の医局もカツカツで回っている面もある中、この4病院は基幹病院としてはびっくりするほど不採算なので、能登半島地震の復興予算でこの辺の医療提供体制をどう扱うかという線引きを最初に決めておかないと本当に地雷だと思っています。そのぐらい、僻地での医療は大変なことなのだという思いを新たにしています。

 今後は岸田文雄さんの現地入りと併せ、1月下旬に開幕する通常国会の前半では、1兆円規模と見られる能登半島地震の復興メニューに向けた政策議論が始まるのではないでしょうか。

 さて、ネットでも米山隆一さんや飯田泰之さんら論客が復興のあり方について議論が重ねられていますが、目下問題になるであろう問題は掲題した「25年後には確実になくなっているであろう、珠洲市や輪島市などにある限界集落に復興予算をどこまでつぎ込むのか」です。