2024年のスタートの日に能登地方を中心に襲った最大震度7、マグニチュード7.6の能登半島地震の被害状況は日に日に大きくなっている。犠牲者は1月11日午前9時現在で213人(災害関連死8人)、交通インフラの多くが遮断され、停電、断水が長期化し、発生から1週間たっても2万8000人以上が避難所生活を強いられ、3300人が孤立状態という状況が続いている。
地震大国とはいえ、この国ではこうした光景が何回繰り返されるのだろうか。今回、甚大な被害を受けた地域は長年にわたって人口減少が続く「全部過疎市町村」といわれる自治体だ。過疎化の実態と天災、防災について検証してみたい。
過疎地の被害はどこまで膨れ上がるのか
能登半島には8つの自治体があるが、中でも被害が甚大だったのは、半島の先端にある珠洲市と隣接する輪島市、能登町、そして穴水町の奥能登の4市町(2市2町)だ。1月11日午前の段階で、石川県内の死者は213人となった。このうち輪島市が83人、珠洲市が98人、穴水町20人、能登町4人で、奥能登4市町で全体の96%を占めている。
建物被害も深刻で、輪島市や珠洲市では地震発生から1週間たっても全容を把握しきれていない状況だ。停電は奥能登を中心に一時2万7000戸、断水は6万6000戸に及んだ。
甚大な被害を受けた奥能登の4市町はどんな規模の自治体なのか。人口を調べてみた。
【輪島市】人口2万3192人(令和5年12月1日)/10年間で約6500人(21.6%)減少
【珠洲市】人口1万2610人(令和5年11月30日)/10年間で約700人(5.2%)減少
【能登町】人口1万5187人(令和6年1月1日)/10年間で約5000人(25%)減少
【穴水町】人口7326人(令和5年12月1日)/10年間で約1700人(18.8%)減少
これらの4市町はいずれも「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」に基づく「全部過疎」と認定されている。人口減少率、高齢者比率、財政力指数などで一定水準以下の要件を満たした自治体が過疎地域とされる。*注
*注:令和4年4月1日現在、全国1719自治体のうち885市町村が過疎地域となっている。その面積は国土の63%を占めている。石川県では上記4市町のほかに七尾市、中能登町、羽咋市などが「全部過疎」となっている。
4市町は例外なく少子高齢化が急速に進んでいる。65歳以上の人口が占める高齢化率(令和2年国勢調査)を見ると、珠洲市の51.7%を筆頭に能登町50.4%、穴水町49.5%、輪島市46.3%といずれも45%を超えていて、石川県全体の30.0%、日本全体の28.7%を大きく上回っている。一方、子ども人口の比率はいずれも7%台。全国平均の12.1%とかけ離れている。これでは町に活気がなくなるのも当然だ。
自主財源率は輪島市24%、珠洲市17%、能登町22%など低水準で、地方交付金をはじめとする依存財源の比率が高い。財政力指数は輪島市0.24、珠洲市0.22など財政基盤の脆弱化は深刻だ。長期的な人口減、若者の流出で高齢化比率が高まり、財政基盤が脆弱で、地域経済・産業も衰退の一途。奥能登4市町の実態は、まさに「縮小ニッポン」の縮図といったところである。