1923年9月1日、東京、神奈川を大きな揺れが襲った。推定10万5000人もの死者・行方不明者を出した関東大震災である。あれから100年。近年、日本では大地震が頻発している。
日本列島は大災害の時代に突入した。そう断言するのは、東日本大震災復興構想会議で議長を務めた五百旗頭真氏(公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構 理事長)である。
大災害の時代とは何か、今後日本列島を襲いうる災害とはどのようなものか、我々は如何に災害に備えるべきか──。『大災害の時代 三大震災から考える』(岩波書店)を上梓した五百旗頭氏に、話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター・ビデオクリエイター)
──書籍冒頭にて、日本の過去1300年の地震の記録を挙げ、日本列島には何度か数十年間の「地震活性期」があったこと、1995年の阪神淡路大震災を皮切りに、日本列島は再び地震活性期に入ったと指摘しています。今後、数十年の間に、日本列島にはどのような災害が起こりうるのでしょうか。
五百旗頭真氏(以下、五百旗頭): 第二次世界大戦終結前後の1944年と1946年には、南海トラフを震源とする大地震が発生しました。また、1948年に福井地震が発生しましたが、これは内陸部の活断層が動くことによって発生する直下型地震でした。
福井地震以降、半世紀ほどの間、内陸部に大きな直下型地震が発生することはありませんでしたが、一つひとつの活断層の活動サイクルは平均で2000年~3000年程度と言われています。従って、100年程度は誤差の範囲で、いつ起こるか想定できません。
それに対し、日本に押し寄せる海洋プレートは、より周期的に地震と津波を起こします。太平洋プレートは年8~10cmのスピードで東北日本の下にもぐり込み、2011年に東日本大震災を起こしました。フィリピン海プレートは年4~5cmの速度で南西日本にもぐり、高い頻度で地震津波を起こします。
南海トラフは2045年±10年?
1950年代になると、日本列島の地震活動は平穏期に入りましたが、1995年の阪神・淡路大震災以降、3~4年ごとに中越地震など大きな地震が日本列島を襲うようになりました。そして、2011年には東日本大震災が発生。日本が地震活性期に入ったということはほぼ間違いないでしょう。
東日本大震災以降、我々が警戒しなければならないのは南海トラフ地震です。
前回の南海トラフ地震は、1944年と1946年に発生しています。その前は、1854年に発生した安政東海地震と安政南海地震です。さらに遡ると、1707年には宝永地震が発生しています。宝永地震は東西を一気に貫く最大規模の地震であっただけでなく、富士山の大噴火を誘発し、関東地方全体を灰で埋めました。
こういった歴史を見ると、南海トラフを震源とする巨大地震発生の間隔は、90年~150年程度と言えます。100年±10年とすると、次に大地震が発生するのは2045年±10年です。