(科学ジャーナリスト:添田 孝史)
今年の夏は暑かった。気候変動の影響で、これからはもっと気温が上がるだろう。
こんな酷暑の中で大災害による停電が続いたら熱中症が心配だ。猛暑日、熱帯夜が続く避難生活を、エアコンなしで乗り切れる自信は全くない。南海トラフ地震や首都直下地震では何日も停電が続くが「災害時ぐらいエアコン無しでがまんしろ」と片付けられる気温ではなくなっている。
もはや災害時の冷房は、飲料水の確保と同じぐらい生命の維持に不可欠だろう。停電した時でもエアコンの使える避難所は少しずつ増えているが、全国に早く広める必要がありそうだ。
停電時でもプロパンや中圧ガスでエアコンは動く
大阪府寝屋川市の中学校の体育館には、停電時でも動かせるエアコンが取り付けられている。普段は安い都市ガスで運転し、それが止まっても備蓄したプロパンガスで72時間は空調と照明などに使う発電ができる。
整備のきっかけは、2018年9月4日に関西を襲った台風21号*1だった。最大瞬間風速秒速58mを超える強風で1300本以上の電柱が折れ、延べ220万軒の大規模停電が発生した*2。
「避難所に来た人から、熱中症の対策が必要でないかと言われ、検討が始まった」と寝屋川市の担当者は話す。現在は市立中学校11校の体育館にこのエアコンを備えている。
東京都足立区では、体育館の空調をどうするか2016年から調べていたが、「せっかくつけるなら停電時にも動くものを」と寝屋川市と同様のエアコンを採用した。2019年の台風で避難所を開設した時に、体調を崩さず長時間すごせる配慮が必要だと実感し、配備を加速したそうだ。今は97校に設置している。