(科学ジャーナリスト:添田 孝史)
半世紀も先送りされてきた高レベル放射性廃棄物の処分問題
日本が原子力発電を本格的に使い始めてから半世紀以上たちました。たまり続けてきた高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)をどう始末するのか、先送りしてきた課題がつきつけられています。
国内で初めて核のゴミの地層処分の調査が進められている北海道寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村で、調査の第一段階の結果が近く報告されそうです。
そんな中で、日本地質学会の会長経験者を含む研究者、教員、技術者ら約300人が10月30日に声明を出しました*1。世界最大級の変動帯である日本に地層処分の適地は無い、もっと専門家の意見を聞いて抜本的に政策を見直すべきだという内容です。
呼び掛け人の一人、赤井純治・新潟大名誉教授にインタビューしました。
日本の地質、フィンランドなどとは大違い
――なぜ声明を出されたのですか。
赤井純治・新潟大名誉教授(以下、赤井) 地層処分とは、原子力発電で生じた核のゴミを、地下300mより深いところに閉じ込めて保管しようという方法です(図1)*2。
*2 原子力発電環境整備機構 高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会 説明資料 p.13
核のゴミの放射線のレベルが、自然界にあるウラン鉱石と同じ程度まで下がるには10万年ぐらいかかります。それだけの長期間、安全に隔離できる地下に埋めなければなりません。
「地層処分が最も適切で実現可能な方法というのが国際社会の共通認識」
地層処分を進める原子力発電環境整備機構(NUMO)はネットCMや新聞広告でこんなふうに宣伝しています*3。しかし、火山国とも地震国とも言われる日本は、地層処分を始めているフィンランドなどとは地質条件が全く違います。
日本で、今後10万年もの間、核のゴミを安定的に保存できる場所を選定できそうにないことは、地球科学を学ぶ者にとっては容易に理解できることです。