(国際ジャーナリスト・木村正人)
クリーンエネルギーへの資金移行を促す「石炭移行加速」イニシアチブ
[ドバイ発]石炭依存症からなかなか抜け出せない日本に対する包囲網が強まっている。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で、フランスは原子力と再生可能エネルギーに注力する一方で、石炭からクリーンエネルギーへの資金の移行を促す「石炭移行加速(Coal Transition Accelerator)」イニシアチブを立ち上げた。
フランス政府によると、このイニシアチブでは2030年までに再生可能エネルギーの投資と普及を3倍にするため、世界銀行に新興・途上国におけるクリーンエネルギーへの投資コストを削減する戦略を主導するよう要請する。石炭移行委員会を発足させ、石炭からクリーンエネルギーへの移行を支援する公的・民間資金を確保する選択肢と解決策を提案する。
経済協力開発機構(OECD)に対しても国際エネルギー機関(IEA)の支援のもと新規の石炭火力発電所への民間投資に伴う気候変動リスクと財務リスクを評価する「ゴールドスタンダード(黄金律)」を確立し、石炭からクリーンエネルギーへの投資の移行を促すよう求める。
昨年、世界の石炭需要は過去最高の83億トンに達した。さらに総容量500ギガワット以上の新しい石炭火力発電所が計画・建設中だ。国際エネルギー機関(IEA)の分析では世界の平均気温上昇を産業革命前に比べ1.5度に抑えるパリ協定目標を達成するには世界で毎年92ギガワット相当の石炭火力発電容量を廃止する必要がある。