離島が多い海洋国家の日本にとって、小型原子炉の推進はメリットが大きい。写真はイメージ(写真:pote-poteco/Shutterstock.com

次世代原発として注目度が高まっている小型原子炉。各国で研究開発が進んでいるが、日本にとっては非常に重要だ。多数の離島を抱える日本では、高コストなディーゼル発電に代わるエネルギー源になり得る。さらに、中国が触手を伸ばすアジア太平洋の島嶼国への普及を進めれば、シーレーンの確保など安全保障にもつながる。

(杉山 大志:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

離島では再エネもディーゼル発電と同様に高コスト

 日本は島国で、離島も無数にある。その離島の電気といえば、ディーゼル発電が定番であるが、コストは高い。ディーゼル発電の発電効率は限られているし、燃料費自体が高い上に、それを離島まで輸送するにも費用がかかる。

 本土であれば、効率の高い大型の発電所を置き、石炭や天然ガスなどの安い燃料を使用すればよいのだが、離島ではそうはいかない。まとまった電力需要がないから仕方がないのだが、何とかならないものか。

 これまで、離島でこそ、太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーが相対的に経済的に有利になるという意見があり、政府の補助を受けて多くの案件が実施された。しかし実際はどうかといえば、あまり芳しい結果が出ていない。

 なぜなら、ディーゼル発電が高いのと同じ理由で、太陽光、風力、地熱もコストが高くなってしまうからだ。

 離島に行くとすぐ分かるが、離島は何でも値段が高い。食品でも文房具などの日用品でもそうだ。規模の経済が働かないこと、輸送にコストがかかることなどが理由である。100円ショップなどほぼ成立しない。

 のみならず、太陽光や風力の場合、規模の経済や輸送コストに加えて、建設費やメンテナンス費用も高くなる。見回りや部品の交換のたびに本土から船でエンジニアを呼ぶとなると、それだけでもけっこうな費用になる。

 また電力系統が小さいことから不安定になりやすく、太陽光や風力の間欠性への対応もいっそう深刻な問題になる。

 結局、いくら太陽光や風力を増やしたところで、日が照らない時や風が止んだときのために、ディーゼル発電設備をなくすわけにいかない。バッテリーを置くとこれもコストアップ要因になる。