倒産、失業者の増加など日本企業が直面する「深刻なダメージ」

 次に、被災直後から数カ月間の被災地や影響が及ぶ地域における主な経済被害の様相を見ていこう。

●建物・資産
倒壊、損失した施設、設備の補修や建て直しに多額の費用が必要になる。液状化発生地域や津波による浸水被害発生地域ではマンション等の資産や地価が下落する。

●生産現場
工場や従業員が被災し、生産力、生産額が減少する。復旧、労働力確保などが遅れた場合、生産額はさらに減少するほか顧客離れが進行する。

●観光・商業
観光・商業施設の損壊、交通アクセスの寸断、風評被害により観光・商業の吸引力が低下する。風評被害の長期化で他地域への顧客流出、観光自粛による損失が拡大。

●電力制限
停電復旧後も節電要請、電力使用制限、計画停電などの電力抑制策により工場稼働率が低下し、生産額が減少する。

●企業中枢
企業の判断・指揮命令機能やデータセンター機能等が停止し、企業活動が停止したり、効率性が低下する。中枢機能の復旧が遅れた場合、生産活動再開の遅れ、効率性低下などで経済への影響が拡大する。

●物流寸断
物流寸断により燃料、素材、重要部品の調達が困難となり全国の生産活動が停止、低下する。その後、調達先を海外に求める動きが顕著となり生産機能の国外流出が進む。

●金融決済
個別の金融機関の支払い不能、特定の市場または決済システムの機能不全等による債務不履行等の影響が他の金融機関、市場、金融システム全体に波及する。

震災による金融危機が懸念される

●株・為替
生産減少などで日本企業に対する信頼が低下した場合、株価や金利・為替の変動に波及し、株価下落などの影響で資金調達コストが増大。企業の財務状況が悪化し、倒産が増加する。

●外資系
被災地や電力制限が実施される地域を中心に外国人の従業員が帰国し、労働力が不足する。日本経済への信頼低下により海外からの投資が減り、外資系企業が撤収する。

 こうした状況を経て復旧、復興が迅速に進めばいいが、東日本大震災をはるかに上回る被害が想定されるなかで、復興は容易ではない。

 経営体力のない企業は倒産に追い込まれるほか、大企業でも被災地の工場再開を諦め事業を撤退する動きも出てくる。雇用環境が悪化し、失業者が増加し、雇用者の所得が下がっていく。その後も海外への調達先の変更、工場の海外移転が進み、生産品の国際シェアが低下。国際競争力の低下につながっていく。

 一方で復興投融資による生産誘発効果が徐々に顕在化し、数年後にはインフラ・建設関連産業を中心に生産誘発効果が生じ、景気の押し上げ効果が生じるという楽観的なシナリオも想定されている。

震災による企業経営悪化で失業者が増加する(写真:ロイター/アフロ)