「最大230兆円超」の被害額に日本は耐えられるのか

 ここまで企業活動を中心にした経済被害の様相を検証してきたが、公共インフラの崩壊など社会全体の被害とその復旧、復興について、内閣府の被害想定に独自の見解を加味して検証を続けたい。

 崩壊したライフラインやインフラの補修、建て直し等の復旧、復興には巨額の費用が必要となる。そこで立ちはだかるのが自治体格差だ。

 救助・救難活動から復旧、復興まで体力、財政力のある自治体と零細自治体では大きな格差が生じる。国交省のサイトによると、災害復旧事業には国が3分の2を負担し、残りが地方負担となる。地方が復旧事業費を起債で賄うと95%は交付税措置となるため、地方の実質的負担は1.7%で済むとなっている。

 とはいえ、被害の大きな自治体や、財政基盤が弱く復旧に時間がかかる自治体は人口流出が加速し、税収入が大幅に減少することは避けられない。国家の疲弊も大きい。莫大な復旧・復興資金が必要となり、財政出動で財務悪化は必至だ。

 内閣府の資料では被害額を検討のベースである「基本ケース」と、揺れによる被害が最大となると想定される「陸側ケース」の2ケースで試算している。

●資産等の被害(被災地)/「基本」100.5兆円、「陸側」171.6兆円
●生産・サービス低下による被害額(全国)/「基本」24.8兆円、「陸側」36.2兆円
●交通寸断による影響(全国)/「基本」4.6兆円 、「陸側」5.9兆円
●港湾の被害/「基本」13.1兆円、「陸側」 20.1兆円

 最大で230兆円超の被害額が想定されているのだ。ただし、この数字は令和元年時点における想定に基づくもの。この先、日本経済が衰退し、株価下落、円安が進行していけば、復旧、復興を取り巻く状況は一層厳しくなるだろう。

 被害額うんぬんよりも復興、再生を日本の力だけでなし得るのかどうかさえ危うくなりかねない。巨大地震発生時は経済大国の支援を受けざるを得ないだろうが、隣国の中国はここへきて経済が急速に悪化している状況だ。今後も人口減少が続き、これまでのような経済力は保てないとみられている。

 そうなると結局は米国頼みということになるのか。震災後には対米追従、従属が一層進むことになるかもしれない。また、震災後の混乱に乗じて日本の国土や不動産が外資に買いあさられてしまう懸念も指摘されている。