来季投手復帰を目指す大谷選手にも、米大リーグで導入が検討されている新ルールの影響が懸念される(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)

 米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手が日本時間7日、5試合ぶりの本塁打を放ち、史上初の「45本塁打、45盗塁(45-45)」に到達した。そんな大谷選手が来季から目指す投手復帰に関して、気になるニュースが、スポーツ専門局ESPNが報じた先発投手に関する新ルールの検討だ。

 導入する場合も数年先とみられるが、先発投手に最低でも6回を投げることを義務づける(100球以上や自責点4以上、負傷の場合を除く)内容で、長い投球回を課すことで肩肘に負担がかかるスピードボールよりも、制球重視で打たせて取るスタイルへの変更を促す狙いがみてとれる。

>>【写真】大谷選手の右肘には手術の痕

 平均年俸が高騰する中、選手がケガによって試合に出られない“遺失利益”を避けたい思惑がある。一方で、若年層のファン離れに歯止めをかけようと、試合時間の短縮を目的に昨季から導入した投球間隔を制限する「ピッチクロック」とは真逆の動きで、選手サイドからはケガの原因になると批判の声が上がる。

 相対するルールを併行して推し進めようとする背景には、米国でも深刻となりつつある野球離れへの懸念がある。巨大市場のメジャーもジレンマを抱えている現状が浮かび上がる。

大リーグが検討中する新ルール、大谷選手の投手復帰にも影響

 大谷選手はこの日の一発で、レギュラーシーズン21試合を残し、前人未到の「50―50」まで5本塁打、4盗塁とした。驚異的な打撃成績を残す一方、来季からの投手復帰に向けても徐々にステップアップ。9月4日には、ブルペンで捕手を座らせて、昨年9月の手術後最多となる15球を投げたことが報じられた。

 投手復帰後の大谷選手にも関係する新ルールで、検討の焦点である先発投手の1試合平均の投球回数は、スポーツニッポンによると、2014年に5.97回だったのが、今季は5.25回に減少。大谷選手も昨季まで86試合に登板し、1試合平均は5.6回。ケガや雨天中断の影響を受けた試合を除き、100球未満、自責点4未満での降板が9度あったという。

 メジャーの先発は中4~5日と、日本よりも短い登板間隔でマウンドに立つ。このため、1試合の交代目安が100球前後とされ、投球回数も短くなる傾向にある。

 先発投手が6回以上を投げ、かつ自責点3以内に抑えた場合には「クオリティ・スタート(QS)」という評価軸も定着する。近年は、投球フォームの解析技術などが進歩し、160キロを超えるスピードボールを投げる投手が増えており、肩や肘への負担増は避けられない。

 今季も、昨季両リーグ最多20勝を挙げたブレーブスのスペンサー・ストライダーが右肘靱帯(じんたい)の損傷が判明してシーズン絶望となった。エンゼルス時代の大谷翔平選手も昨年9月、2度目となる右肘手術を受けている。