「自分を軽視している」と部下に対して疑心暗鬼になる独裁者

 スターリンの権力統合は農業集団化と工業化における惨事とともにやってきた。大飢饉で推定500万~800万人が餓死した後、大粛清が行われた。毛沢東は大躍進政策を開始したが、大飢饉で数千万人の中国人が命を落とした。そのあと文化大革命が始まった。

 習氏はゼロコロナ政策とその突然の終了で人道的災害を引き起こした。民間セクターへの弾圧と反市場的経済政策で、すでに鈍化している中国の経済成長をさらに悪化させ、雇用・所得・消費に打撃を与えた。新たな粛清はこのあと行われた。

5月9日、モスクワで行われた戦勝記念日の軍事パレードに出席した中国の習近平主席とロシアのプーチン大統領(写真:UPI/アフロ)

 権力が1人に集中しすぎると政策判断ミスや災害が多発。独裁者は「部下が自分を軽視している」と疑心暗鬼に駆られる。失敗の責任を転嫁するため側近を粛清する。粛清への恐怖から部下は点数稼ぎに走り、独裁者の胸中を忖度して過激な政策を打ち出すようになる。

 習氏は裸の王様化し、党や軍の幹部は「人民解放軍は台湾侵攻の準備ができている」「米軍に勝てる」という習氏の耳に心地よい報告しか上げなくなる恐れがある。習氏が「勝てる」と誤認して台湾や尖閣での作戦に踏み切るリスクが高まる。