習近平による粛清、エスカレートするのはなぜか

 米スタンフォード大学中国経済研究所の呉国光上級研究員は今年3月、日本記者クラブでの会見で、習氏はライバルの江沢民派や胡錦濤派を徹底的に排除し、党幹部に「習礼賛」を強要、かつての毛沢東に肩を並べる「神仏」のような地位を築き上げたと解説した。

 国内の腐敗蔓延を好機と捉え、反腐敗キャンペーンを通じてライバルを追放した。空いたポストに自分の部下を配置し自身の権力基盤を固めた。党内腐敗、経済不均衡、イデオロギーの混乱、国家安全保障の脆弱さを認め、長期政権を正当化する口実に使った。軍も支配下に置いた。

 呉氏の論文「習近平の粛清はエスカレートしている。なぜそれは止まらないのか」(2月25日付)によると、昨年第1〜3四半期に党・政府機関全体で約64万人の幹部が処分された。かつてはライバル派閥が標的だったが、忠誠心で選ばれた習氏の腹心も粛清されるようになった。

 中国の政治権力構造が再構成されてからわずか2年余りの間に9.3%が粛清の影響を受けた。習氏の3期目は忠臣が重要ポストを固め、国家指導部の再編成に成功したにもかかわらず、粛清は止まらない。習氏が側近中の側近まで粛清し始めた理由はいったい何なのか。