台湾問題に“過敏”になりやすくなる構造、その延長線上には「尖閣」も

 偶発的な衝突が起きた際、現場や中間の報告ラインが責任逃れのため事実を隠蔽・歪曲し、中央が正確な情勢判断ができずに全面衝突へエスカレートする危険性がある。独裁者には国内統治の失敗に対する国民の不満を逸らすため外部に敵を求める傾向がある。

 経済的求心力を失った習氏が正統性を維持する最後の手段として「台湾統一」「尖閣奪取」というナショナリズムに走るシナリオも十分に考えておく必要がある。国内の不満が爆発寸前になった時、緊張を極限まで高める誘惑に駆られる構造的リスクが習氏の独裁体制にはある。

 高市発言についてトランプ氏に電話で苦情を言ったことは習氏が台湾問題を「自らの権威そのもの」と同一視し、極めて過敏になっていることを示唆している。冷静な戦略的判断が失われやすい危険な兆候だ。日本は言動には慎重に慎重を期す必要がある。

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。