ブケレ大統領のあり得ない人権意識の低さ
ヴァン=ホーレン議員とブケレ大統領、どちらの投稿が「真実」かは不明である。しかし、ヴァン=ホーレン議員はアブレゴ=ガルシア氏の前に置かれたグラスの液体が少なめであり、あたかも同氏がマルガリータを飲んだという体をしているが、グラスの周りについていた塩、ないしは砂糖が全く減っていないと指摘した。
ヴァン=ホーレン氏の言い分が正しいのであれば、ブケレ氏は無実のアブレゴ=ガルシア氏が、エルサルバドルであたかもパラダイスのような刑務所暮らしをしているなどという、相当稚拙かつ姑息な演出をしたことになる。アブレゴ=ガルシア氏が小綺麗な身なりをしていることも疑問だ。他方ブケレ氏の主張が正しければ、エルサルバドルは受刑者にアルコール摂取を容認する、犯罪者に優しい国ということになる。
20日には、米国に帰国したヴァン=ホーレン議員と入れ替わりに、更に4人の民主党下院議員団がアブレゴ=ガルシア氏との面会を要請するためエルサルバドル入りした。
ヴァン=ホーレン議員は当初、エルサルバドル側からアブレゴ=ガルシア氏との面会を拒否され、CECOTに入ることも許されなかった。しかしノーム米国土安全保障長官は3月26日、厳重な警備下にあるCECOTの見学ツアーをしている上に、多数の囚人たちをバックにSNS映えするような動画撮影を許されている。
かつてブッシュ(息子)政権下のイラク戦争において、米兵による刑務所内でのイラク人虐待が発覚した。頭に袋を被せられ、裸で山積みにされたイラク人の後ろで米兵が笑顔で記念撮影をした写真が流出し、大問題となった。
今回のノーム長官の“映え動画”はこの事件を彷彿とさせるものの、イラクでの虐待写真は内部告発で明るみになった。米政府高官自らが大っぴらに囚人の人権を無視した動画を広報している現状は、狂気の沙汰である。
ワシントンの連邦地裁判事は3月15日、誤送還によりCECOTに放り込まれた無実のアブレゴ=ガルシア氏を含む移民がエルサルバドルに送られた際、強制送還を14日間停止するよう命じた。しかし、移民らを乗せた3機の航空機はすでにエルサルバドルに向かっていた。判事は口頭でこれら航空機を米国に引き返すよう命じたが、送還は強行された。
ブケレ大統領はX上この司法判断について「おっと… 遅すぎた」と泣き笑いの絵文字付きでジョークにしている。