エルサルバドルの「巨大刑務所」の実態とは

 4万人が収容可能な巨大刑務所は、ギャングの一掃を掲げたブケレ政権によって建設された。2010年代より深刻なギャング抗争で一般市民にも死者が出るようになり、2022年ブケレ氏は非常事態を宣言。テロリスト指定されたギャングの大量摘発に乗り出した。これまでに8万3000人以上が拘束されている。

 治安は回復されたが、一方で非常事態令が何度も延長され、逮捕者への弁護権もなく拘束理由すら知らせないなど、国際法を逸脱していると人権団体から問題視されている。日光もささず、すし詰め状態の刑務所では拷問が横行し、医療も受けられないなど劣悪な環境とされる。

 アムネスティは昨年末、受刑者300人以上の死亡を報告した。CECOTはそうした中でも最も過酷な環境下にあると言い、出所の唯一の交通手段は棺桶だと揶揄(やゆ)されてもいる。

トランプ政権の手違いによる強制送還問題で記者会見を開く民主党のヴァン=ホーレン議員(写真:AP/アフロ )

 ブケレ大統領は今年2月トランプ政権に対し、不法移民など米国の犯罪者をこのCECOTに有償で受け入れると提案した。米政府はこれを歓迎。AP通信が入手した文書によれば、エルサルバドルは受刑者1人当たり年間2万ドルの「料金」を得ているとされる。

 3月以降米国から送り込まれた人たちの数で計算すると、エルサルバドルは米国との「商売」で既に600万ドルもの利益を得たことになる。

 トランプ政権は行政上の手違いを認め、最高裁は男性の帰還を求めている。だが、米国への帰還を拒否し続ける米およびエルサルバドル政府に業を煮やしたヴァン=ホーレン議員は、自らエルサルバドルに入りアブレゴ=ガルシア氏との面会を直談判した。物議をかもした画像は、それがようやく実現した場面を写したものである。

 ブケレ大統領は先の投稿で、アブレゴ=ガルシア氏が「奇跡的に”死のキャンプ”と”拷問”から生き返り、エルサルバドルのトロピカル・パラダイスでヴァン=ホーレン上院議員とマルガリータをすすっている」と絵文字付きで皮肉った。

 ヴァン=ホーレン議員によれば、面談の際アブレゴ=ガルシア氏はこの体験で心に深い傷を負ったと話した。また9日ほど前に、CECOTから別の刑務所に移されたと証言していたと言う。それはちょうど米メリーランド州の地方判事が政権に対し、アブレゴ=ガルシア氏の米国への帰還を促進するよう命じた数日後に当たる。