カナダ総選挙が近づいている。写真は与党・自由党の集会にて(写真:ロイター/アフロ)

カナダで4月28日、総選挙が実施される。1月にトルドー前首相が辞任を表明したとき、与党の支持率は20%で野党と20ポイント以上も差をつけられていた。だが、その後、劇的に逆転。トランプ関税への国民の怒りにより、トランプ氏そっくりの言動を繰り返してきた「ミニ・トランプ」とも称される野党党首離れが加速したことが背景にあるとされる。総選挙に向けて、カナダ国内でいったい、何が起きていたのか。

(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)

 カナダの総選挙が間近に迫っている。2900万人余りの有権者は4月28日、3月からジャスティン・トルドー前首相に代わりカナダを率いている自由党党首、マーク・カーニー氏を信任するのか注目される。

 今回の選挙に対する国民の関心の高さには、目を見張るものがある。キリスト教の復活祭で連休だった4月18日から21日にかけて期日前投票をした人の数は、有権者の約4分の1にあたる730万人を超えた。カナダ選挙管理委員会によると、これは2021年の前回総選挙から25%の増加で、史上最多とされる。

 物価高や住宅価格の高騰などによる政権に対する国民の不満が高まり、トルドー氏は1月初めに辞任を表明した。そのときの与党自由党の支持率は20%と、危機的な水準にまで落ち込んでいた。

 今年1月、米国でトランプ政権が発足すると、カナダはトランプ大統領により最初の関税戦争の標的とされた上に、「カナダを米国51番目の州として併合する」と何度も脅された。カナダ国内で米製品はボイコットされ、米国への渡航も大幅に減少した。対米感情の悪化に比例し、カナダ人の愛国心が高まったとされている。

 こうした状況のなか、1月以降のカナダ国内の政党支持率の推移は実に興味深い。当初、野党保守党は約44%の世論の支持を得て、自由党に24ポイント以上もの差をつけていた。そのため、今年の政権交代は必至とみられていた。

 ところが総選挙直前の4月25日現在、公共放送CBCの世論調査によれば自由党の支持率は約42%、保守党は39%程度と逆転している。その差は大きくはないものの、世論調査の結果が正確であれば、この間保守党は25ポイント近くもあった支持率の差を消滅させた上にリードを奪われ、逆に自由党はこの短期間で「奇跡のカムバック」を果たしたと言える。

 何が起きたのか。