連立協議を始めた与野党が交わしたある合意
3月4日、ドイツの次期政権樹立に向けて協議を開始した中道右派政党・キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と中道左派政党・社会民主党(SPD)はある合意を交わした。
この合意は具体的には以下の3点から構成されている。
①今後10年間を対象として、連邦予算とは別枠に総額5000億ユーロの特別基金を創設すること
②名目GDP比1%を超える防衛費を債務ブレーキの対象外とすること
③州政府の財政赤字を名目GDP比0.35%まで認めること(※これまでは連邦政府が0.35%まで認められているのに対し、州政府は完全均衡であるゼロ%が義務付けられていた)
要するに、財政均衡を強いる債務ブレーキ法について、その例外適用の範囲を拡大するという話だ。より簡単に言えば、「もう財政均衡を厳格に遵守することはない」という合意である。
2月23日の総選挙を受けた新議会が招集されてしまうと、債務ブレーキ法の堅持を主張する極右政党・ドイツのための選択肢(AfD)が第二勢力となり、これらの合意は難しくなる。ゆえに、新議会招集の期限(3月25日)までに迅速な議論とその成立を目指して、ドイツ政治が動き出しているという現状である。
この報道直後、ドイツ10年物国債利回りの上昇幅は+30bpに達した。これは東西ドイツの統合により拡張財政を強いられた1990年3月以来の大幅上昇である(図表①)。
【図表①】
