がんセンターが指摘した再生医療の「お手盛り審査」
一つ、その見直しの方向性を考える上で参考になる研究報告がある。国立がん研究センターを中心とする研究グループが、安確法に基づく再生医療の運営に深刻な懸念を表明しているのだ。
調査によれば、再生医療の治療計画の約25%が十分な科学的根拠を欠き、30%の計画で担当医師の専門性と治療内容が一致していなかったという。また、治療計画の「使い回し」や、審査を行う委員会と医療機関との関係性に問題がある事例も報告されている。
「お手盛り審査」が行われている可能性があるわけだ。加えて委員会と医療機関をつなぐ企業の存在も問題視した。
これは、まさしくがんの自費細胞療法でみられる、筆者が確認した疑問点に合致している。
今回事故を起こした医療法人が提供しているNK細胞療法は、科学的根拠が不足していると指摘されているものであり、責任者はがん治療の専門医ではなく、ダイエット内科医だった。審査した認定再生医療等委員会は「医療法人輝鳳会認定再生医療等委員会」とある。これは名前から判断すれば同グループだとわかる。
さらに、国立がん研究センターの研究報告では、医療機関のウェブサイトにおける誇大広告も問題視されている。
再生医療を提供するクリニックの半数以上が「厚生労働省の認可を受けている」「国が認めた委員会の厳しい審査を通過している」などと記載しているが、行政からお墨付きを得ているかのような記述は厚生労働省の医療広告ガイドラインで禁止されている行為だ。これらの問題は、再生医療の信頼性を損なう要因となっている。
今回事故を起こしたTHE K CLINICのウェブサイトは見当たらないが、医療法人輝鳳会のウェブサイトには、「多数の『再生医療等提供計画書』を提出し、厚生労働省から受理されております」との記載があった。これはガイドラインに抵触する可能性がある。