(星良孝:ステラ・メディックス代表/獣医師/ジャーナリスト)
結核集団感染の報告が日本各地で相次いでいる。結核の感染者数は着実に減少傾向にあるが、ゲリラ豪雨のように、散発的に大勢の感染者が発生しているのだ。
コロナ禍を経て人流が回復したことで、さまざまな感染症が広がっている。最近では、マイコプラズマ肺炎の感染者が急増しているほか、人食いバクテリアやエムポックスという感染症の発生も問題視されている。
◎エムポックス急拡大の背景に「強毒型1b」と「売買春」、ゲイからヘテロに感染が広がり始めた意味(JBpress):
◎若年層や妊婦も容赦なく襲う高致死率の「人食いバクテリア」、冬場の感染急増に備えるには?(JBpress)
結核は以前から集団発生が問題になることはあったが、このところ集団発生の報道が特に増えている印象だ。いったいなぜなのか。
そこで今回は、最近の結核集団感染の状況を見ながら、その背景とこれから対策を講じるべき課題について考察していく。掘り下げていくと、2027年までの制度変更を見据え、隠れた課題が浮かび上がる。治療に薬剤費だけで350万円近くがかかる薬剤耐性結核(保険適用前)のリスクにも注意すべきだ。
東京都足立区の中学校で11人が感染判明
最近大きく報道された集団感染には次のようなものがあった。直近では筆頭に書いたが、この10月に福島県郡山市で結核集団感染が報道された。目にした人もいたかもしれない。
●福島県郡山市
2024年10月 高齢者施設34人(うち4人発病)、医療機関1人
●東京都足立区
2024年9月 中学校生徒・職員11人(うち2人発病)
●青森県八戸市
2024年9月 職場の接触者18人(うち2人発病)
●福岡県北九州市
2024年8月 日本語学校学生・職員19人(うち10人発病)
●茨城県土浦市
2024年8月 介護老人保健施設入所者5人、職員6人(計11人)
●秋田県秋田市
2024年5月 高齢者施設入所者・職員5人(うち3人発病)
●福岡県福岡市
2023年10月 日本語学校学生4人、職員9人(計14人)
それでは、国内全体で見たときの結核の発生はどうかというと、下図で示している通り、集団感染が頻発している印象とは対照的に、全体としては減少傾向にある。
2000年は年間4万人が報告されたが、今では1万人を切る水準にまで減少した。この20年強の期間に実に4分の1以下に減った格好だ。全体の数字から見ると、たまたま報道によって集団感染が目立っているだけなのかとも感じられる。
しかし、結核感染者の内訳を細かく見ると、急増しているグループの存在が浮かび上がる。それは外国出生者の結核だ。次ページのグラフに明らかなように、新規に結核感染が判明する外国人の推移が特に13年以降、拡大している。