日本語学校の生徒で結核が増える理由

 海外から中長期で日本に在留する外国人を見ると、中国からの来日が最も多く、続いてベトナムからの来日者が増加している。また、韓国が減る一方で、フィリピンからの来日者が増えていることが分かる。

日本に中長期で在留する外国人。出身国別の人数(出典:入管白書「出入国管理」)

日本に中長期で在留する外国人。出身国別の人数(出典:入管白書「出入国管理」)
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 東南アジアの場合、技能の移転や人手不足の解消を目的として来日する外国人や留学生が大半を占める。

 労働者の在留資格として主なものに、帰国前提で技能移転のため来日して就労する「技能実習生」と、一定の専門性を持って来日して就労する「特定技能」がある。

 高柳氏によると、外国出生者の結核には、発見が遅れて病状がかなり進んだケースが珍しくない。

「特定技能や技能実習生では、入国前後に一定の健診を受ける機会はあるものの、結核が見逃されてしまうケースも少なくありません。健康診断で異常が見つかったとしても、その後のフォローアップが不十分で適切な受診に結びつかなかったり、病院に受診しても風邪と言われてしまったりして、結局は症状が進行してしまう場合もあります」

 例えば、日本で働き始めた後に結核が発覚した特定技能の外国人のケース。入国前に出身国で健診を受けて異常があったが、肺炎と診断されて結核の検査が不十分だった。その後、日本での就労中に症状が進行。言葉の壁もあり、なかなか受診につながらず、診断が遅れた結果、結核が進行し、同室者数名も結核に感染してしまったという。

 このほか、ある技能実習生は、出身国で結核に感染していたが、まだ発病していなかったため、入国前の健診では結核が発見されず、そのまま日本に入国した。入国後数カ月経過してから、咳や体重減少などの症状が現れたが、最初に受診したクリニックでは風邪と診断され、結核の検査は行われなかった。

 その後、症状が悪化し、再度医療機関を受診したところ、ようやく結核と診断された。この間に症状が進行したため、入院を要する状態になってしまった。

 また、一部の留学生では結核を見つける機会が限られている。

「日本での就労を希望して来日する外国人の中には、 まず日本語学校に入り、その後、専門学校に進学する人が多いのですが、日本語学校では結核検診が義務付けられておらず、学校の任意となるため、結核を発見する機会がない場合もあります。こうした留学生の多くは、シェアハウス、2DKのような狭い部屋で複数人と共同生活をしているため、結核の診断が遅れて、同居している外国人にも結核の感染が拡大してしまうケースが報告されています」

 日本語学校の生徒は若年層が多く、普段から健康を意識する機会は少ない。症状があっても医療機関に行かず、活動範囲も広いため、周囲に感染を広げてしまうリスクも高い。診断が遅れた場合、既に複数の接触者に感染が拡大しているケースも見られる。集団生活環境では、結核が一度発生すると、その広がりを抑えるのは非常に困難で、早期発見が何よりも大切だ。

 こうした背景を知ると、日本で起きている集団感染の背景をうかがい知ることができる。