第三に、税金の無駄遣いである。ベニヤ板と角材の材料費、それに掲示板を作成し、設置するための人件費などがかかる。選挙後は、撤去のための費用がかかる。それに、使用後の掲示板を焼却処分すると、二酸化炭素など地球温暖化ガスを排出し、環境保全に逆行する。

新人排除の道具になっている

 第四に、掲示板は、組織を持たない新人の立候補を妨げている。

 私の最初の選挙は、1999年の都知事選であった。立候補したのが、自民党・公明党が推す明石康(元国連事務次長)、民主党が支援する鳩山邦夫、共産党が推す三上満、政党の支援を受けない無所属が、石原慎太郎、柿沢弘治、舛添要一であった。結果は、石原が1,664,558票で当選、鳩山が851,130票、舛添が836,104票、明石が690,308票、三上が661,881票、柿沢が632,054票であった。

1999年2月、都知事選への出馬を発表した舛添要一氏。右は栗本慎一郎衆議院議員(写真:共同通信社)
拡大画像表示

 私は、組織もなく、徒手空拳で、ボランティアに支えられた選挙を戦った。初めての経験で、戸惑ったり、苦労したりすることが多かったが、まず、最初の困難は掲示板にポスターを貼ることであった。

 都内には、約1万4000箇所に掲示板が設置してある。ボランテイアの仲間が分担する地域を決めて、手分けして貼っていく。選挙期間は17日であるが、最初の5日間でも半分も貼れていない状況であった。東京都は広く、島嶼部もあれば、山間部もある。「自分の家の近くの掲示板にはポスターが貼られていない」という苦情が多くの都民から寄せられた。

 私を支持するタクシーの運転手さんは、私の選挙事務所に乗り付けて、「都内を流しているが、あまりにもポスターが貼られていない。ポスターを100枚下さい。私が都内を走行中に貼ってあげます。」と申し出てくれた。

 政党や労働組合などの組織が支援する候補は、選挙戦スタートの初日に、全ての掲示板にポスターを貼ることができている。

 この私の味わった苦労は、金の力で解決できる。ある運送業者に依頼すると、当時は300万円出せば、ポスター貼りを請け負うという。しかし、私には、そのような費用を捻出できなかったので、これは断った。

 お金はないが、志のある若者が立候補しようとすると、政党の幹部たちは、「君、選挙ポスターをどうやって貼るのかね。人手はあるのか、金はあるのか」と問うて、「脅迫」する。これで、ほとんどの若者は立候補を断念する。つまり、新人の立候補を妨げるための手段として、掲示板が使われているのである。

 2014年の都知事選のときは、私は自民党と公明党の支援を受けたので、選挙開始日に、全ての掲示板に私のポスターが貼られた。初回の挑戦のときとは雲泥の差であった。