本来は、屋外ではなく、学校の体育館や公民館などを会場にした演説会のみにすると、騒音にはならないが、広いスペースの会場を選管が確保するのが困難である。また、ホテルなどの有料の会場だと、金のある候補者が優遇されることになる。

 アメリカでは、広大な会場で支持者を集めて候補者は演説会を開く。セキュリティ・チェックもあり、安全上も不安がない。また、日本のつばさの党のような他候補に対する妨害行為もできなくなる。これは理想だが、現実的には日本、とくに大都市では難しい。

 私は、新宿駅などの駅頭や渋谷駅のハチ公前広場などでよく街頭演説を行ったが、動員をかけなくても、多数の有権者が足を止めて演説を聞いてくれた。そして、演説終了後に、「今の話を聞いて、舛添さんに投票することに決めました」と駆け寄ってくれる有権者もいた。

 街頭演説は維持したいが、移動中の街宣車の音出しは禁止したい。

世論調査実施の規制は?

 選挙情勢に関する世論調査についても、世論に大きな影響を与えるので、たとえば、投票日の3日前以降は禁止すべきというような規制を加えるかどうかも検討に値する課題である。マスコミは報道の自由だというであろうが、世論調査結果を見て、当選者が決まってしまっていると思うと、投票所に足を運ばない有権者も増える可能性がある。また、世論調査が、勝ち馬に乗るバンドワゴン効果や負けそうな候補を助けるアンダードッグ効果などにつながることも指摘されている。

 今回の異様な都知事選を、以上指摘したような諸点について、選挙の仕組みを変える機会にしたいものである。

【舛添要一】国際政治学者。株式会社舛添政治経済研究所所長。参議院議員、厚生労働大臣、東京都知事などを歴任。『母に襁褓をあてるときーー介護 闘いの日々』(中公文庫)『憲法改正のオモテとウラ』(講談社現代新書)『舛添メモ 厚労官僚との闘い752日』(小学館)『都知事失格』(小学館)『ヒトラーの正体』『ムッソリーニの正体』『スターリンの正体』(ともに小学館新書)『プーチンの復讐と第三次世界大戦序曲』(インターナショナル新書)『スマホ時代の6か国語学習法!』(たちばな出版)など著書多数。YouTubeチャンネル『舛添要一、世界と日本を語る』でも最新の時事問題について鋭く解説している。