ローカル線再生へ「お金」は大きな関門。近江鉄道線を支える各自治体はいかにして折り合ったのか(写真:KUZUHA/イメージマート)ローカル線再生へ「お金」は大きな関門。近江鉄道線を支える各自治体はいかにして折り合ったのか(写真:KUZUHA/イメージマート)
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(土井勉:一般社団法人グローカル交流推進機構 理事長)

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関門:沿線自治体はいくら払うのか? 

1.上下分離のスキームで必要となる沿線市町の費用負担割合には皆が注目する

 第5回(2020年12月17日)の近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会(以下、法定協議会)では、上下分離に伴って必要となる各自治体が負担する費用と、その負担割合について、簡単な紹介があった。

 ただ、この日は議題が多くあり、十分な意見交換ができなかったので、第6回法定協議会(2021年3月22日)において、費用負担額とその負担割合について再度の説明と質疑・意見交換が行われた。この場での主な発言者は市長・町長であった。

 近江鉄道線を全線存続するため、上下分離を行うと鉄道施設などのインフラの維持管理等で必要となる費用は、沿線市町と県が分担することになる。これにより、近江鉄道線を支える費用は誰がどれくらい負担するのかが具体化される。

 実際には、図-11)のような流れで、自治体が負担すべき費用が確定されていった。

 この図-1をベースに、図-21)に示すように駅数(50%の負担割合、以下同様)、営業キロ(20%)、住民定期利用者数(30%)を指標として、近江鉄道線が沿線市町に関わる程度に応じた割合が、費用負担割合の算定の根拠として滋賀県から提案があった。

図-1 近江鉄道線のインフラ部分に関する費用負担額確定の流れ図-1 近江鉄道線のインフラ部分に関する費用負担額確定の流れ1)
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図-2 沿線市町の費用負担割合図-2 沿線市町の費用負担割合1)
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 当たり前だが、どこの市町も、できれば1円でも負担は少ない方が良い。そして、各市町の議会や地域住民などに対して説明する際に、納得性の高い説明材料が欲しい。

 ここで各市町にとっては、駅の存在が近江鉄道線との関わりが大きいということで、費用負担の半数を占めるとしている。これは市町にとっても受け入れやすい指標であり、大きな反対意見は出なかった。

土井 勉(どい・つとむ) 一般社団法人グローカル交流推進機構(GLeX)理事長。1950年京都市生まれ。名古屋大学大学院工学研究科修了。京都市、阪急電鉄、神戸国際大学経済学部教授、京都大学大学院工学研究科・医学研究科安寧の都市ユニット特定教授、大阪大学COデザインセンター特任教授を経て現職。京都大学より博士(工学)、技術士(建設部門)。専門は「総合交通政策とまちづくり」。著作に「人口減少時代の公共交通」(日本経済新聞:やさしい経済学,全8回連載,2018年)、クロスセクター効果に関する研究論文など多数。交通政策やまちづくりに関し多くの行政委員などを歴任。「近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会」では活性化分科会座長を務める。