(写真:Sinngern/Shutterstock.com) 

故ジャニー喜多川氏の性加害問題でテレビ局も厳しい批判の的になり、各局は釈明に追われている。放送業界は放送免許に守られた「最後の護送船団」と言われ、高い収益性を誇ってきた。しかし、少子高齢化と地方経済衰退の荒波が業界を襲い、特に民放ローカル局を経営難に陥れている。総務省も巻き込んで再編・統合など救済の動きも垣間見えるが、旧ジャニーズ問題の対応で見られるような、ご都合主義を振りかざすと視聴者の離反を招きかねない。テレビ広告市場が収縮する中、生き残りが問われる時代に入った。

(岡部 隆明:就職コンサルタント、元テレビ朝日人事部長)

ジャニーズ問題、CMセールスの現場ではマイナス影響は軽微か

「セールスで大きな問題はない。『ジャニーズタレント番組はNG』というスポンサーもなかにはあるが、別の番組を買うだけで宣伝予算を引っ込めたりしない」

 10月の番組改編の営業活動が終わった後、民放キー局に勤める営業マンA氏は強気な発言をしていました。故ジャニー喜多川氏による性加害が大きな問題となっていますが、現状ではCMセールスで気になるほどのマイナス影響を受けてはいないようです。

 10月改編後、各局のドラマやバラエティーに旧ジャニーズ事務所のタレントが変わらず出演しています。「タレントに罪はない」という民放の理屈が、少なくともテレビ広告市場では通用していることがわかります。

 前回のコラム「『リアルタイムで見るのはスポーツだけに』テレビマンの焦りが現実になる日」で、番組の視聴率に基づく、民放・広告会社・スポンサーによる三位一体のビジネススキームは、三者に大きな「果実」をもたらしてきたと述べました。詰まるところ、このスキームを支えているのはスポンサーのCM出稿への意欲なので、そこが保持されていれば民放としては安心感が醸成されます。

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「ジャニーズのタレントはテレビCMの世界で多大な貢献をしたので、『問題は問題として、タレントの起用やCM出稿は変えたくない』と、本音を打ち明けるスポンサーの宣伝マンは結構いますよ」

NHKが東京・渋谷のNHK放送センター内でジャニー喜多川氏から性被害に遭ったとする男性の証言を報じるなど、ジャニーズ問題ではテレビ業界にまつわるニュースが続く(写真:共同通信社)

 A氏は、そんな事情も語りました。私はそこにビジネススキームに基づく一体感や結束力の強さを感じます。

 しかし、民放テレビの繁栄をもたらしてきた、そのスキームを崩壊させかねない問題が忍び寄っています。それはローカル局の経営難です。