守られた業界ゆえの緩慢さ

 再編・統合の形は様々あると思いますが、たとえば経営体力のあるA局を軸にして、同じ地域ブロックのB局、C局を合併して、BとCは支局化するという考え方があります。これにより放送設備などの費用削減が期待できます。ここで重要なのは、BとCの報道取材や営業の拠点を残して、ネットワーク体制を維持することです。

 再編・統合がどういう形であっても、当該地域の視聴者にとっては、もともと見ていた番組の9割くらいがキー局制作のものだったので影響は軽微だと思います。ほとんどの国民にとっては関心のない話だと思われますが、放送免許に守られ、新陳代謝のなかった放送業界にも再編・統合という形で「地殻変動」が始まろうとしています。ただ、それによって護送船団の後ろの方の隊列が少し変わるだけかもしれませんが・・・。

 分配金頼みという特異なビジネスモデルのローカル局は、人口減少と地方経済の衰退という不可逆な流れにどのように抗い、存在意義を保持していくのでしょうか。インターネットは国境を越えてしまいます。そういう時代に、県単位で放送するとか、しないとかを今頃、取り沙汰しているのは、守られた業界ゆえの緩慢さがあるような気がします。

「全てが依存体質だった」

 あるローカル局の元社長に取材をした際に、その方が反省とあきらめの気持ちを込めて発した言葉です。元社長は在任期間に自社制作比率を8%から15%にまで上げて、収益を拡大し、社内の活性化に結びつける実績を残しました。にもかかわらず、小さい「パイ」を分け合うビジネスには限界があり、「笑っちゃうような」分配金システムに頼るばかりだったということです。

「高校野球の開会式では来賓席に座らされて、なんだか偉そうなんだ。だけど、こんなのは経営の真似事だよ」

 こう自嘲気味に残した言葉も印象的でした。