(朝比奈 一郎:青山社中筆頭代表・CEO)
旧ジャニーズのタレントは「かわいそう」なのか
今回は、ジャニーズ問題を題材に、現在の日本社会について考えてみたいと思います。
ジャニー喜多川氏による性加害問題で日本の芸能界を席巻していたジャニーズ事務所が消滅するという事態になりました。記者会見での「指名NGリスト」の存在などもあり、連日この問題が大きく報じられていますが、そうしたなかで「亡くなったジャニー氏や事務所の問題なのに、事件とは無関係の所属タレントが批判されたり活動に影響が出たりしているのはかわいそう」という論調も散見されます。
所属タレントの中にも、事務所の対応を見て、「勘弁してくれ」と発言したなどと報じられている人もいます。
しかし、世間や所属タレントのそうした態度・発言は、日本社会ではあまり賛同を得られないと思います。
ある組織において不祥事が起こった場合、不祥事と無関係のその組織の構成員が「俺は無関係だから」という態度をとったり、あるいは組織を批判したりする行為を、日本の社会風土はあまり好意的に受け止めてくれないのです。
むしろ、その組織の構成員は、極端な場合、組織の不祥事を以前から知っていようが知っていまいが、そこに所属していた以上はある程度、責任を負わざるを得ないのが日本社会の実態です。今回のように知りうべき立場にあったのであるならなおさらです。
本当にジャニー喜多川氏による性加害を全く知らなかったのならば同情の余地もあるでしょうが、この問題は、訴訟にもなり告白本や記事も複数出ています。ある程度、ジャニーズ事務所に在籍していたタレントならば「知らなかった」わけはないでしょう。少なくとも“噂”を耳にしたことが無いとは考えにくいと思います。自分が被害に遭ったわけではないタレントは、「知っていながら知らないふりをしていた」というのが実態ではないでしょうか。