(英エコノミスト誌 2024年12月14日号)

トランプ氏にとって同盟国は単なる下請け業者にすぎないのかもしれない(Foto-RaBeによるPixabayからの画像)

トランプ氏は同盟国に絶大な支配力を行使できるものの、無慈悲な独裁者は取引を拒むかもしれない。

 保有資産で適切なポートフォリオを組んでいれば、不動産デベロッパーは建築家や建設業者、テナントになるかもしれない顧客などに強い支配力を行使できる。

 しかし、最も裕福なデベロッパーでさえ、放火魔にはその影響力がほとんど及ばない。

 建築物をめぐるこのようなものの見方は、世界の秩序を再編する自身の能力について次期米国大統領が正しいと同時に誤ってもいる理由を理解するのに驚くほど役立つ。

 筆者は先行きを予想するリスクを取ってもいい。

 ドナルド・トランプ氏は2度目の大統領就任後、米国とつながりを持つことで利益を得ている国々や同盟国に対しては絶大な支配力を行使する。

 一方で、西側との関係が完全に切れてしまっても構わないと考える敵対的な国々に対してはその影響力があまり及ばないだろう――。

米国経済は世界一価値ある「不動産」

 トランプ氏の話しぶりからは、すべての方面に自分の支配力が及ぶと自信を持っている雰囲気が伝わってくる。

 それがカナダ、中国、欧州連合(EU)、メキシコを指すかはともかく、経済面の有力なパートナーには、多額の関税を課すから覚悟せよとの警告を発した上で、米国との貿易の条件を再度交渉しようと呼びかけている。

 それと同時に、トランプ氏はロシアとウクライナの戦争を24時間以内にやめさせると公約してきた。

 イスラム組織ハマスには、2023年10月7日にイスラエル領内で捕らえた人質を解放せよ、さもなくば「長くて名高い米国史に記されている誰よりも激しい攻撃を受けることになるぞ」と警告している。

 このアプローチの長所と限界は、第1期トランプ政権を間近で見てきた米国内外の政府関係者には明らかだ。

 カジノやホテル、ゴルフ場を作ってきたトランプ氏の半生から同じ側近がたびたび教訓を引き出している様子には本当に驚かされる。

 実際、トランプ氏が応じたインタビューの映像や原稿を何年も前のものまで振り返ると、米国経済を世界で最も価値のある不動産とみなしているかに聞こえるくだりが時折見つかる。

 これまでの米国大統領は外国のパートナーから十分な額の利用料を徴収してこなかった、その意味でいいカモにされていたと考えているために、トランプ氏は攻撃的な賃料見直し交渉を仕掛ける準備を整えている。