2.核搭載艦船の領海通過・寄港が事前協議の対象にならないとの政府見解を示すべき
核搭載艦船のわが国領海の通過については、政府は、いわゆる60年安保国会当時から、そのような通過が一般国際法上の無害通航に該当する場合には事前協議の対象にならないとの見解を示していた。
しかし、その後1968年の国会において領海条約の審議が行われた際、当時政府が政策として打ち出した非核三原則等を踏まえて、一般国際法上の無害通航制度について改めて検討した。
その結果、政府は、核搭載外国軍艦の我が国領海の通過は無害通航とは認めないとの考え方を1968年4月17日の衆議院外務委員会において政府統一見解として明らかにした。
この統一見解以降は、核搭載艦船の我が国領海通過は、無害通航に該当せず、核の持ち込みという観点から事前協議の対象となるものとされている。
この1968年の政府統一見解があるため、日本政府は津軽海峡を含む5海峡(宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道、大隅海峡)について、領海の幅を基線から3海里(約5.5km)に制限している。
このためこれらの海峡の真ん中に公海が存在する奇妙な形となっている。
2009年6月22日付け共同通信は、以下のように報じた。
「政府が宗谷、津軽など5つの重要海峡の領海幅を3カイリ(約5.6キロ)にとどめ、法的に可能な12カイリ(約22キロ)を採用してこなかったのは、米軍の核搭載艦船による核持ち込みを政治問題化させないための措置だったことが分かった」
「政府判断の根底には、1960年の安保条約改定時に交わされ核持ち込みの密約があつた。複数の元外務事務次官が共同通信に証言した」
「これらの海峡は、ソ連(現ロシア)や中国、北朝鮮をにらんだ日本海の核抑止の作戦航行を行う米戦略原子力潜水艦などが必ず通らなければならないが、12カイリでは公海部分が消滅する海峡ができるため、核が日本領海を通過することになる」
「このため、核持ち込み禁止などをうたった非核三原則への抵触を非難されることを恐れた政府は、公海部分を意図的に残し、核通過を優先するため、今日まで領海を制限してきた。表向きは『重要海峡での自由通航促進のため』と説明してきており、説明責任を問われそうである」
新たな外交・防衛政策の基本方針であるNSSを改定する今、「国家のウソ」を断ち切るべきである。
そして、新たに、核搭載艦船の領海の通過や寄港が事前協議の対象にならないとの統一見解を示すべきである。