1.非核三原則が核密約の存在により形骸化

 国民を騙している政策は、早々に廃止されなければならない。

 外国の軍隊による我が国領域内への核兵器の持ち込みは、憲法上禁止されていないが、「持ち込ませず」との非核三原則により、すべて認めず、米国についても安保条約に基づき核持ち込みの事前協議がなされた場合には、これを拒否することとしている。

 しかし、米軍による核兵器の持ち込み疑惑が、たびたび報じられ、その都度、政府は、米国が核を持ち込む場合(寄港・領海通過を含む)には事前協議を行うこととなっており、事前協議がない以上、核の持ち込みはないとの答弁を繰り返している 。

 他方、米国は核兵器の存在について「肯定も否定もしない政策」(NCND:Neither confirm nor deny)をとっていることもあり、持ち込みに関する国民の不信感はいまだ払拭されていない。

 次に、米軍による核持ち込みについて日米間に密約が存在することを示唆する発言などを紹介する。

 以下は、参議院外交防衛委員会調査室 岡留康文氏著『非核三原則と核密約論議~反核と核の傘のはざま~』を参考にしている。

(1)ラロック証言

 1974年9月10日、米両院原子力合同委員会の軍事利用小委員会において、ラロック退役海軍少将が、核兵器が搭載可能な米軍の空母、フリゲート艦、駆逐艦等には、経験上、核を搭載しており、日本などに寄港する際に、核兵器を降ろすことはしない旨の証言を行ったことが、同年10月初旬に公表された。

 これに関連して、米国では、核の通過を認める日米政府間の密約があるとの報道がなされた。

 ラロック証言をめぐり国会では激しい議論が行われた。与野党とも核の存否を米側に問い合わせ、国民の不信を解消する努力が必要であると主張した。

 米政府は、10月12日、

①米政府は核兵器に対する日本国民の特殊な感情を理解し、日本政府の核政策に背かない

②安保条約に基づく事前協議に当たり、日本政府の意思に反して行動しない、などの制約を遵守し、引き続き誠実に守る

③ラロック発言は一私人によってなされたもので、米政府の見解を代表するものではない、との公式見解を覚書の形で日本政府に伝達した。

 木村俊夫外務大臣(当時)は、安保条約は日米間の信頼にその基本的な基盤を置いており、事前協議がない限り核持ち込みはない、また、秘密協定は口頭、文書とも一切ない旨の答弁を行った。