空襲警報が鳴りビルの地下に避難したウクライナの首都キエフの住民(2月25日、写真:AP/アフロ)

 ロシア軍は、2月24日午前、ウクライナに軍事侵攻し、首都キエフや各地の軍事施設をミサイルで空爆した。

 米国防総省やウクライナ政府によるとロシア軍は3方向から攻撃し、短距離弾道ミサイルなど1000発以上を使用。

 ベラルーシとの北部国境や南部クリミア半島との境界から地上部隊が侵入した。

 ロシア国防省はロシア軍がウクライナにある陸上の標的83カ所を破壊し、24日の攻撃目標を達成したと発表した。

 軍事侵攻に先立ってプーチン大統領は、2月24日午前6時(日本時間24日正午)頃、国営テレビで放送したビデオ声明で表明した。

「(ウクライナ東部の住民が)ロシアに支援を求めている。ウクライナ政権によるジェノサイド(集団殺害)にさらされている人々を保護するために(地域の)非軍事化を目指す」と説明した。

 あくまで人道目的での軍事作戦だと強弁した。

「ロシアの計画にはウクライナの占領は含まれていない」と説明し、ウクライナに抵抗を諦めるよう迫った。

 一方、国連安全保障理事会は日本時間24日午前11時半すぎから緊急会合を開催した。

 グテレス国連事務総長は会合後、記者団に対し「人道の名の下に、軍隊をロシアに戻すよう(プーチン)大統領に求める」と述べた。

 同事務総長がウクライナに関して声明を出すのは筆者の知る限りこれが最初である。同事務総長は、これまでのところ、平和的な解決のための仲介に当たっていない。

 さて、筆者は拙稿「徹底解説:ウクライナ危機とNATO東方拡大の歴史(2022.1.24)」で、「ロシアは、第3次世界大戦に発展する恐れのあるウクライナへの大規模侵攻は行わず、今回もクリミア併合と同じ手法を取ると見ている」と述べた。

 すなわち、クライナ東部の親ロシア派武装勢力が実効支配するドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国地域を「独立国家」として認め、ロシア人保護を名目に軍を派遣し、次に両共和国をロシア連邦に編入する。

 そして、親ロ派地域を足掛かりに勢力範囲を広げ、現ウクライナ政権に圧力をかけるというものである。

 ところが、ロシアは、筆者の推測と異なりウクライナ全域に対する軍事侵攻に踏み切った。

 なぜロシアは軍事侵攻に踏み切ったのか。その他にもいろいろな「なぜ」がある。以下、それらの理由等を考察してみたい。