2月24日、ウクライナへの「特別な軍事作戦」について演説するロシアのプーチン大統領(提供:Russian Look/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 2月24日、ロシア軍はウクライナに侵攻した。主要な軍事施設をミサイルなどで攻撃し、空港や防空システムを破壊し、制空権を獲得した。その上で、空からの援護を受けながら、全土にわたって戦車で制圧し始めている。クリミア半島・黒海から海軍も参加している。もう軍事的には勝負は付いており、プーチン大統領は、ゼレンスキー政権の転覆と親露政権の樹立を目論んでいる。

 欧米、そして日本は、ロシアの国際法違反を厳しく弾劾しているが、経済制裁を課すのみで、軍事的には手を出せない。ウクライナはNATOの加盟国でもないし、軍事力で反撃すれば第三次世界大戦の引き金を引くことになるからである。

五輪閉会式翌日にウクライナ東部に2つの「国家」を承認

 北京五輪閉会式、そしてロシア・ベラルーシの合同軍事演習終了が2月20日である。その翌日の21日、プーチン大統領は、ウクライナ東部のルガンスク、ドネツク両州のうち、親露派武装勢力が実効支配している地域(それぞれ、ルガンスク人民共和国、ドネツク人民共和国を標榜)を国家承認した。そして、「両国」内の平和維持のために、ロシア軍の派遣を検討していると明言した。

 23日、クレムリンは、「両国」から、ウクライナ政府軍から攻撃されているとして、ロシア軍の派遣を依頼されたと明らかにした。プーチン大統領は、「両国」に対して「特別な軍事作戦を実施」することを表明した。

 これに対して、アメリカはロシアによるウクライナ侵攻が事実上始まったとして、経済制裁を課すことを決め、イギリスやEU、日本などが同様な措置を採った。24日に予定されていた米露外相会談、そしてその後に行われるはずであった米露首脳会談はキャンセルされた。

 そして、プーチンは、宣言した通り、「特別な軍事作戦」の実施に踏み切ったのである。その電光石火ぶりは世界を驚かせているが、周到に計画された軍事作戦であることは明白である。