ウクライナ東部で停戦違反行為が相次いでいる。東部ドネツク州で預金を引き出すためATMに並ぶ市民(2022年2月18日、写真:ロイター/アフロ)

(黒井 文太郎:軍事ジャーナリスト)

「プーチン大統領が決断を下したと考えている。そう考える理由がある」

「侵攻は数週間以内、または数日以内に行われる可能性がある」

 2月18日、米国のバイデン大統領はそう言って危機感を表明した。

 いよいよロシア軍のウクライナ侵攻が現実味を帯びてきた。その米国の危機感の元になっているのが、ロシア軍が「撤退する」と言いながら実際にはさらに増強され、臨戦態勢に入っていることだ。

 また、ロシアが侵攻の口実に自作自演の軍事攻撃・テロを起こす徴候も察知されており、それも米国は強く警戒している。ブリンケン国務長官は2月17日、国連安保理会合で「想定されるロシアのシナリオ」として、次のように語った。「化学兵器テロや市民への無人機攻撃など自作自演テロを起こし、ロシア系住民へのジェノサイド(集団殺戮)だと非難し、同胞保護を口実にミサイル攻撃や地上侵攻を開始する可能性がある。サイバー攻撃、全土への爆撃もあり得る。首都キエフも標的になるだろう」。おそらくロシア側のその準備を示す情報を掴んでいるのだろう。

 こうした自作自演の攻撃やテロは「偽旗(にせはた)作戦」と呼ばれる。古くは旧日本軍の関東軍が満洲事変の端緒で行った事例が有名だが、謀略工作を常套手段とするロシアの軍・情報機関なら、その準備をしていないはずがない。どういった偽旗作戦に実行命令が下るかはプーチン大統領の状況計算と判断次第だが、そうした秘密工作の情報を事前に米軍・米情報機関がキャッチしたという流れだろう。