(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
緊迫するウクライナ情勢。ロシアがウクライナ国境付近に展開していた軍の一部の撤収をはじめたと15日に発表したかと思えば、16日には米国のブリンケン国務長官がこれを否定して「むしろ国境付近に軍が集結している」とテレビのインタビューで公言。17日にはバイデン大統領がホワイトハウスで記者団から、ロシアのウクライナ侵攻の可能性について問われると、「非常に高い。私の感覚では今後数日中に起こると思う」と述べる一方で、米ロ両国は翌週の外相会談を調整している。
情報だけが大きく飛び交いつつも、ロシアのウクライナ侵攻は、いつ起きてもおかしくない状況だ。
そうしたなかで、当事者であるウクライナの国民はなにを思っているのか。どういう状況にあるのか。
大統領の呼びかけとは真逆、キエフ市長が鳴らす警鐘
私はかつてウクライナを訪れたことがある。チェルノブイリ原子力発電所の事故現場の取材だったが、その度に首都キエフに1週間から数週間は滞在していた。そこで知り合った現地の人間と連絡を取りながら、ここのところの状況の推移を注視してきた。いまの時点で、ウクライナに起きていることを振り返っておきたい。
「防空壕を整備しろ」「警報サイレンの点検をしろ」
2月4日の北京オリンピック開幕直前に、ウクライナの関係者に連絡を取ると、キエフの市長がそう号令をかけていることを教えてくれた。ウクライナのゼレンスキー大統領が国民に「慌てるな」「パニックになるな」と、ずっと呼びかけているのとは対象的だ。