(黒井 文太郎:軍事ジャーナリスト)
10万を超すロシア軍がウクライナ国境に展開し、米国に「NATO不拡大の保証」を要求。プーチン大統領は「欧米が敵対的な路線を続ければ軍事的対抗措置をとる」と脅している。軍事力で他国の政策を強制する行為である。
現在、米露がぎりぎりの駆け引きを行っているが、ロシアの不法な要求が受け入れられることはない。プーチン大統領はこのまま交渉を続けるか、言葉どおりにウクライナに侵攻するかを選択することになる。ロシア軍は侵攻の準備がすでにできており、後はプーチン大統領の命令を待つだけだ。いずれにせよロシア側が行おうとしているのは自衛ということではなく、完全に「侵略」行為といえる。
もっとも、プーチン大統領の命令による侵略は初めてではない。2014年3月、ウクライナの政変に乗じてクリミアを占領し、その後、併合した。また、東部のドンバス地方で親ロシア派民兵の蜂起を工作し、その背後で密かにロシア軍も動いた。いずれもウクライナという他国に軍を侵攻させる侵略行為である。
プーチン大統領はいまや世界平和の破壊と人権侵害を主導する侵略者の筆頭となっているが、彼はいかにしてそんな人間になったのか。改めてその暗黒の足跡を辿ってみたい。