ロシアは、経済制裁に対しては強力な対抗措置を採ると反撃している。ヨーロッパ諸国はロシアの天然ガスに大きく依存しており、その供給が断たれれば日常生活が麻痺する。実際に、原油価格も24日には1バレル100ドルの大台を突破した。世界経済への影響も甚大なものになりつつある。

 2週間前の本コラムに「ヒトラーに重なるプーチン『帝国再興』の野望:民族自決と宥和政策が許したナチス台頭、世界は教訓を生かせるか」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68827)という論考を書いたが、予想通りの展開となってしまった。

敗戦国ロシア

 第一次世界大戦の敗戦国、ドイツでは領土は割譲させられ、巨額の賠償金を課せられ、経済は疲弊し、国民の不満が高まった。ナチスは、その不満に訴えて選挙で躍進し、遂に1933年1月には政権に就く。そして首相となったヒトラーは、失われた領土を回復すべく、外交攻勢に出る。その結果、ザール地方やチェコスロバキアのズデーテン地方などドイツ系住民が多く住む地域をドイツ領に吸収していく。1938年にはオーストリアを併合し、アンシュルス(独墺合併)も実現した。

 その背景には武力があった。ナチスドイツは、1935年3月には徴兵制を再導入し、1936年3月には非武装地帯であるラインラントに進駐している。急速な軍備拡張によって、軍事力を誇示しながら失地回復という成果を上げていったのである。

 1989年のベルリンの壁崩壊で東西冷戦は終わったが、アメリカが盟主を務める西側が勝利し、ロシアが率いる東側が敗けたのである。3年後の1991年12月にはソ連邦が解体し、15あった共和国はそれぞれ単独の国家として独立していった。

 冷戦の敗者であるロシアで、2000年3月の大統領選挙で当選し、大統領に就任したのがプーチンである。アメリカと勢力を二分したソ連邦の時代を懐かしむプーチンは、ソ連帝国、強いロシアの復活、失われた領土の回復を大きな目標に掲げる。まさに、ヒトラーと同じである。

 その際の大義名分は、ロシア系住民の保護である。これもヒトラーと同じである。そして、ロシア連邦から離脱して独立しようとする各地域の民族主義者に対しては、徹底して弾圧するのである。

 政権就任後、プーチンは、2000年チェチェン、2008年グルジア、2014年クリミア、2015年シリアと軍事介入し、いずれも期待通りの成果を上げている。まさに「常勝」のリーダーなのであり、その度にロシア国民の間で支持率も上昇している。