2月25日、ロシア軍の侵攻に備えて首都キエフの中心地に配備されたウクライナ国家親衛隊の隊員たち(写真:ロイター/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 ロシアによる侵攻が迫ったウクライナの国内の状況について伝えたのは先週末のことだった。

 首都キエフに暮らす私の知人は、すでに妻と子どもたちをポーランドとの国境近くに避難させながら、ロシアが攻めてきても「そう簡単には負けない」と気丈に語っていた。

「ジェノサイドが起きている」を主張

 その時点では、ロシアの侵攻についていくつかのシナリオが考えられていたが、ウクライナ国内の大勢としてもっとも有力だったのは、ロシアと国境を接する東部の一部を占領して自治共和国を置くのではないか、というものだった。

(参考)「家族はすでに避難」旧知のキエフ市民が語った危機への覚悟
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68931

 途中までは、まさにそのシナリオ通りだった。

 ロシアのプーチン大統領が、親ロシア派武装勢力が実効支配するウクライナ東部のルガンスク州とドネツク州の一部地域を「ルガンスク人民共和国」「ドネツク人民共和国」として独立を承認したのが、21日のことだった。それも北京冬季オリンピックが閉幕した翌日だった。プーチンは開会式に招かれて、習近平国家主席と会談をしていたことから、中国側に配慮して大会期間中の侵攻は避けるのではないか、と書いた通りだった。

 プーチンは独立を承認する大統領令に署名すると、2地域とロシアとの友好相互援助条約にも署名。23日に親ロシア派武装勢力が「ウクライナ軍の攻撃を撃退するため」の軍事支援をプーチン大統領に要請したことを公表すると、プーチンは翌24日にウクライナ政府軍による「ジェノサイド(民族大量虐殺)」が東部地域で起きていると主張し、「ロシア系住民の保護」「自国民の保護」を理由にロシア軍に軍事侵攻を開始させた。