2月19日、ウクライナ東部ドネツク地方の上空を飛行するウクライナ軍のMi-8ヘリコプター(写真:ロイター/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 北京冬季オリンピックが終わった。

 開会式には、ロシアとしての出場が認められていないにもかかわらず、プーチン大統領が招待され、これにあわせて習近平国家主席と首脳会談を行っていた。そこへ水を差さないようにオリンピックの閉幕を待って、プーチンがウクライナへの侵攻を画策していたのだとしたら、これでいつでもやりやすくなった。

 米国のバイデン大統領も、閉幕の3日前の17日にはウクライナへの侵攻の可能性について「私の感覚では今後数日中に起こると思う」と述べ、18日には「現時点で、プーチン大統領は決断したと確信している」と公言している。

ワリエワ騒動に見るロシアの行動原理

 そのロシアが、国としてオリンピックに出場できないのは、2014年のソチ大会で国家ぐるみでのドーピングが認められ、その後も検査データの改竄や隠匿をしていたことから、22年12月まで主要国際大会から排除されたことによる。ただし、不正に関与していないと証明できた選手は個人資格で、昨夏の東京大会に引き続き北京大会でも「ROC=ロシアオリンピック委員会」として参加を認められていた。

 ところが、ROCとして出場していたフィギュアスケート女子シングルの金メダル最有力候補だったカミラ・ワリエワ選手にドーピング疑惑が大会期間中に発覚する。

 昨年12月のロシア選手権で採取された検体から、禁止薬物「トリメタジジン」が検出されたことが判明。ロシア反ドーピング機関(RUSADA)は暫定資格停止処分としたが、ワリエラ側の異議申し立てを受けて、翌日には処分を解除。これを不服とした国際オリンピック委員会(IOC)、世界反ドーピング機関(WADA)などがスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴した。CASは、ワリエワが16歳未満の「要保護者」にあたること、出場を妨げれば「回復不可能な損害を与える」などを考慮して訴えを退け、ワリエワの出場継続を認めた。