CASによると、ワリエワ側は祖父が定期的に服用している心臓疾患の薬を、同じ食器やグラスを使用した際に誤って摂取したと主張していたというが、果たしてそんなことが認められるだろうか。同じ検体からは、禁止薬物には指定されていないものの、やはり心臓疾患の治療に使用される「L-カルニチン」と「ハイポクセン」の2種類の薬物が検出されている。こちらは検査時に提出する書類で、ワリエラは使用を申告しているという。

 そもそも、世界的にドーピングが禁止されているのは、スポーツ競技の公平性や健全性を保つこともさることながら、薬物によって身体が蝕まれることを防ぎ、選手の健康と安全を守ることを重要視しているからだ。15歳のワリエラ選手が個人でドーピングをするとは考えにくい。背景に組織的関与があるのだとしたら、「要保護者」はその組織の中に押し戻されたことになる。言い換えれば、親から虐待を受けていた子どもが、「要保護者」を理由に親元に帰されたようなものだ。

 出場が認められたワリエラは、ショートプログラムこそ1位で通過したものの、フリーでは本来の精彩を欠き、結果4位に終わっている。フリーの演技を見る限りでは、精神的に追い込まれていたことは明らかで(少なくとも私にはそう見えた)、終了後にはコーチからの心ない叱責が批判的に報じられている。出場を認めたことでかえって精神的に「回復不可能な損害を与える」ことになったのではないか。

 あらためてロシアという国は、組織的に違反行為を行っていたところであり、平然と改竄も隠匿もやる。そうまでして身勝手に覇権を握りたがる。事ここに至って、またしても組織的な関与を疑ったところで、然もありなん、と頷く人たちのほうが多いはずだ。

キエフ市長は「防空壕を整備しろ」の号令

 それを“お国柄”というのであれば、ウクライナへの侵攻は、まさにその映し鏡のようなものだ。プーチンがNATO(北西洋条約機構)の勢力拡大を理由にあげようとも、早い話が自分の思うとおりにならない、いうことを聞かない隣国を、前世紀でもあるまいに、いま武力で制圧しようというのだから、これほど野蛮で厄介な国はない。むしろ、厄介で迷惑な国であり続けることによって、世界への影響力を維持し続ける“大国”でありたいという意向すらうかがえる。そのためなら、手段を選ばない。

 米国のバイデン大統領は18日にした演説の中で「ロシアが1週間か数日のうちにウクライナを攻撃しようとしていると信じるに足る理由がある。標的は、280万の罪のない市民が暮らす首都キエフだと思う」と述べると、記者からの「プーチン大統領が侵攻する決断をした兆候はあるのか」との質問に、「現時点で、プーチン大統領は決断をしたと確信している」と断言してみせた。