ロシアの“お国柄”と、今回のプーチンが「決断をした」ことからして、北方四島が日本へ返還される可能性があるといえるだろうか。国境を接する主権国家に武力侵攻しようという国とその指導者である。1945年に相互不可侵を定めた日ソ中立条約を一方的に破棄して奪い取った四島を、もはや交渉で日本に返還するなど、想像もできない。しかも、プーチンは1956年の日ソ共同宣言で合意したはずの二島返還にしても、いわゆる「ダレスの恫喝」で前進しなくなったことを、安倍晋三元首相との共同記者会見の場でひけらかすほど熟知している。むしろ、経済特区に指定して日本の資本を呼び込み、ロシア領土として動かしがたいものにしようとしている。
対ロシア戦略を練り直す必要
北京オリンピックが閉幕した20日の翌21日は、1972年に当時の米国のニクソン大統領が電撃訪中を実現してから、ちょうど50年の節目の日にあたる。当時は、ソ連と中国の関係が険悪となり、国境紛争も起きていたところへ、東西冷戦の勢力図を塗りかえようとする米国の思惑が孤立する中国を国際社会に復帰させることにつながった。そこからははじまった米国の「関与政策」はいまや失敗に終わり、中国が世界の大国として米国の前に立ちはだかる。
一方で、50年後の中国とロシアの蜜月ぶりは今回のオリンピック外交を通じても世界が注目するところだ。しかも両国は軍事的にも連携を強化し、昨年10月には両海軍の艦艇計10隻が日本海から津軽海峡を経由して太平洋に出たあと南下して、日本周辺海域を一周している。いつでも侵攻できる、と誇示するように。
日本政府が、今後も従前どおりの交渉で北方四島が返ってくると信じているのなら、こんなに能天気なこともない。それ以上に、ウクライナの危機を目の当たりにして、中国を含めた外交、防衛戦略の見直しを急がないとなると、これほど間の抜けたこともないはずだ。いや、北方領土問題の解決はすでに遅すぎるのではないか。そう危機感を募らせるのは私だけだろうか。