イランの首都テヘランで行われた、フーシ派を支援するデモに参加したイランの礼拝者たち(2022年1月28日、写真:AP/アフロ)

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格は1バレル=90ドル台前半で推移している。7年5カ月ぶりの高値水準だ。「ロシアのウクライナ侵攻が迫っている」との観測が相場を押し上げている。ロシアが侵攻すれば、欧米諸国は経済制裁を科し、ロシアから欧州へのエネルギー供給が止まるという事態が現実味を増しているからだ。

 天然ガスの大輸出国であるロシアは原油輸出の大国でもある。ロシアの原油輸出量は日量約500万バレル、そのうち約6割は欧州向けだ。世界の原油生産量(日量約1億バレル)の3%を占めるロシアから欧州への原油輸出が停止すれば、原油価格が高騰するのは必至だ。

 だが原油輸出が止まるのはロシアにとっても大打撃だ。天然ガスに注目が集まっているが、ロシア経済を支えているのは天然ガスではなく原油だからだ。旧ソ連が崩壊した要因の1つに1980年代後半の原油価格の急落が指摘されている。仮に原油価格が高騰したとしても、原油の大半を輸出できなければロシア経済は急激に悪化し、国庫も火の車となる。欧米以上に国内のインフレが深刻化し、長期政権に対する国内の不満が高まる中で、プーチン大統領がこのような「火遊び」をするだろうか。

 いずれにせよ、今後しばらくの間はウクライナを巡る緊張状態が原油相場を牽引する要因になることは間違いない。