ベネズエラの国営石油会社「PDVSA」の精製施設(資料写真、2016年11月17日、写真:ロイター/アフロ)

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格は1バレル=110ドルから130ドルの間の高値で推移している。

 ロシアの大手銀行を国際決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除することが決定すると、欧米諸国がロシア産原油の輸入禁止を検討する動きが顕著となり、世界の原油供給が不足するとの懸念が台頭したからだ。

 ロシア産原油の欧米向け輸出量は日量約400万バレル、世界の原油供給の4%に相当する。「今年(2022年)の世界の原油市場は日量約100万バレルの供給過剰になる」とする国際エネルギー機関(IEA)」のシナリオとはまったく異なる展開になってしまい、市場がパニックを起こしてしまった結果だと言っても過言ではない。

 買い手が激減したロシア産原油を中国企業が安値で買い入れるとの観測も出ている。中国の原油輸入量(日量1000万バレル超)のうち、ロシアからの輸入量は約150万バレルだ。中国は今年1月、人民元建て決済でイラン産原油を日量70万バレル以上輸入しているが、このパターンが繰り返されるというわけだ。

 中国への輸出増で欧米向けの輸出分をどれだけカバーできるかどうかは不明だが、バルト海や黒海からのロシア産原油の流れが大きく変わることは間違いない。