「脱アベノミクス」へと進む岸田首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ロシアによる軍事進攻から1週間以上が経った今も、終息への道筋が見えないウクライナ情勢。日本にとっても、海を隔てた遠い国の出来事ではなく、暮らしや家計への影響が長期化しかねない事態へと発展しつつある。

 私たちの身の回りのモノやサービスの値段にはどのような影響が及ぶのか。日本や世界のマクロ経済はどうなっていくのか。第一生命経済研究所の永濱利廣・首席エコノミストに話を聞いた(聞き手、河合 達郎、フリーライター)。

ロシア軍が制圧したとされるウクライナのザポリージャ原発(写真:ZUMA Press/アフロ)

──原油先物価格が、1バレル=110ドルを超える水準にまで高騰しています。原油価格の高騰は、私たちの家計にどの程度の影響を及ぼすでしょうか。

永濱利廣氏(以下、永濱):原油価格が上昇すると、企業の投入コストが高まります。最終製品やサービスにまで転嫁されるようになってくると、家計にとっても痛手となります。

ガソリン、小麦、生鮮食品の値上げに覚悟すべし

 総務省の「家計調査」をベースに、原油先物価格と消費者物価との関係を勘案し、具体的な家計への影響を試算してみます。

 2021年の家計調査では、2人以上世帯における年平均支出額は約334万8000円です。原油価格の平均が80ドルで推移した場合、22~23年の2年間で家計負担は2万5000円増。90ドルでは3万円増、100ドルでは3万5000円増、110ドルでは4万円増と試算されます。

──具体的には、どのようなモノやサービスの価格上昇が想定されますか。

永濱:最初に影響が表れるのが、ガソリン、軽油、灯油です。これらは商品市況に基づいてすぐに販売価格に反映されるため、1~2週間後から影響が表れます。

 次に、3~5カ月遅れて電気料金やガス料金。タイムラグが発生するのは、燃料費調整制度という仕組みにより、3~5カ月前の輸入化石燃料の平均価格が実際の料金に反映されるためです。

 それから、さらに遅れて食料品に影響が出てきます。一番わかりやすいのは小麦です。小麦は政府が一括で買い取って製粉会社に売り渡しますが、価格改定が年2回だけです。そのため、今年後半から1年程度かけて価格上昇が起きるでしょう。

 今後、野菜や魚などの生鮮食品の価格にも大きな影響が出てくると思われます。農業用ハウスの温度調整に業務用ガソリンを使いますし、漁船を動かすのに重油を使うからです。