屋外テントの中で横たわるコロナ患者(写真:ロイター/アフロ)

(平田 祐司:香港在住経営者)

 香港での新型コロナ新規感染者数は、3月3日に5万6827人と2日連続で5万人を超えた。人口740万人の0.77%だ。東京都(1400万人)に換算すると10万7000人。東京のピーク時の約5倍に相当するすさまじい数だ。

 昨年末まで約3カ月にわたり市中感染ゼロであった香港が、一転して世界有数の「感染拡大地域」になってしまった。一体、香港では何が起きているのだろうか。

過去最高の感染者数をもたらした香港政府の失策と市民の油断

 香港では新規感染者数が初めて1万人を突破した2月25日以降、ほぼ連日、右上がりで感染者数が増大中だ。昨年末まで概ね市中での感染拡大を抑え込んでいただけに、心理的準備も含め、状況の急展開に当局も市民も対応の術を失っているかのようだ。

 中国同様、香港政府のコロナ対策は厳しい入国制限と強制隔離、つまりウイルスを市域に持ち込まないことに重点を置いていた。そのため、いざ市中感性が拡大した場合の治療・療養体制、感染者の移送や隔離病床の確保といった準備が不十分だったと言える。

 隔離病床不足で重症となった感染者を病棟の床に寝かしたり、急ごしらえの屋外テントで患者が夜を明かさざるを得なかったりと、医療インフラがかなり整備されている香港では考えられない事態が繰り広げられている。

 デルタ株の感染拡大がなかったことで、香港市民の気が緩んでいた点も否めない。

 昨年秋以降、飲食店等での各種制限が緩和されたこともあり、あたかもコロナ以前に戻ったかのように大人数での宴会が繰り広げられていた。一定の市中感染があることを前提にした防疫対策を怠っていた政府と、ウイルスは入ってこないと過信した市民の油断が、わずか2週間で累計33万人、人口の4.5%にも相当する爆発的な感染拡大をもたらした一因と言えよう。