ウイルス対策・防疫を口実にますます進む統制・管理社会(写真:AP/アフロ)

ウイルス対策・防疫を口実にますます進む統制・管理社会

 ゼロコロナ政策を掲げ、厳格な入国規制と強制隔離、強制検疫を実施したことで、昨年末まで感染拡大をほぼゼロに抑え込んでいた香港だが、年明けからオミクロン株とデルタ株の感染が拡大し、執筆時点の2月11日には新規感染者が1500人と過去最高に達した。

 年明け早々から夜18時以降の店内飲食は禁止され、2月10日からは理髪店・美容室と各種宗教施設も強制閉鎖(営業禁止)された。24日からはワクチン未接種者は、飲食店はおろかスーパーやデパートにまで立ち入りが禁止される事態である。

 補償の有無を含め事前に十分な説明もなく次から次に打ち出される強制措置に、市民も不満を口にしながらあきらめ顔だ。国家安全法施行以来、香港政府による相次ぐ強制措置になすすべなく翻弄される香港社会はどうなっていくのか、現地からの最新レポートをお届けする。

 香港では、昨年末まで約3カ月にわたって市中感染ゼロと新型コロナを抑え込んでいたが、キャセイパシフィックの乗務員が強制隔離規則を無視して「家族と外食した」ことから、オミクロン株の感染拡大が始まったと香港当局は断定している。

 行政長官のキャリー・ラムはキャセイの責任者を呼びつけ厳しく叱責したためか、感染した乗務員2名は即刻解雇。主要メディアも「キャセイ犯人説」を大々的に報じた。

 海外の例では、検疫前の乗客が利用する空港内施設で働く清掃作業員や乗客の手荷物を扱う空港職員からもオミクロン株感染が確認されており、キャセイのクルーにすべての責任を押し付けるのはどうかという見方もネット世論では出ていた。だが、政府見解に公に疑義を唱えるメディアは見当たらなかった。

オミクロン株の感染拡大の元凶と名指しされたキャセイパシフィック(写真:ロイター/アフロ)