韓国大統領選の野党候補、「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補。与党「共に民主党」の李在明候補と争っているが、どちらになっても韓国の未来は暗いと考えている韓国人は少なくない(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(立花 志音:在韓ライター)

 韓国労働組合総連合の釜山支部が反旗を翻して、保守系政党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補に支持声明を出したというニュースが2月9日付の朝鮮日報に出た。前日には、韓国労働組合総連合が与党「共に民主党」の李在明候補を公式に支持しており、釜山支部が相反する立場を取ったと注目されている。

 釜山支部の代表者と組合員は、「大韓民国の危機を心配し、大韓民国の失われた5年を取り戻すために尹候補と共に政権交代を狙う。文政権は公正と正義、そして常識に欠けている。矛盾する政策ばかりを乱発している」と批判している。

 選挙投票日まで1カ月を残した韓国大統領選は、李在明候補が有利にも見えていたが、最後までなにが起こるかわからない。李在明候補が政権を握れば民主主義が危なくなるとわかってきたのだろうか。

 1月に李在明候補が国民に宛てたメッセージの中で、「弱者を助け、強者を分ける世の中。和合する世の中に向かって、国民の皆さんと手を取り、力強く進んでゆきます」という部分があったのだが、保守派の若者たちの中では、「強者を分ける世の中」とは共産主義を意味すると警笛を鳴らす人もいる。

 百貨店などを展開する韓国財閥・新世界グループの鄭溶鎮副会長が自身のInstagramに「滅共」と言及し、炎上したことで論争にもなった。

 不思議なことは、「滅共」論争で新世界グループと関連会社の株価が下がったり、新世界グループに対して不買運動をしようという声が上がったりしたことである。そして、Instagramは該当の投稿を「ガイドライン違反」として削除した。共産主義に反対したらSNSが削除されてしまうのである。